CEOメッセージの読み方:重要事項の絞り込みはなされているか

  • 中長期の価値創造に関する情報

 

投資家にとって必要な情報とは、企業の中長期の価値創造に関する情報です。企業の経営者が、中長期的な視点で経営を行わない限り、結局足元の業績もあがってこないからです。

 

企業の中長期の価値創造に関する情報として、簡潔にまとめてある情報の一つに「統合報告書」があります。

 

統合報告書は、財務情報ばかりに目を向けがちな投資家にとっては、より高い視点から中長期の企業の価値創造の姿を俯瞰するのに役立ちます。

 

統合報告書には、財務情報だけでなく、「企業の価値を創造する能力」や「企業の利益を稼ぐ能力」に関連する非財務情報が含まれています。

 

例えば、「最高経営責任者(CEO)メッセージ」「最高財務責任者(CFO)メッセージ」「戦略と資源配分」「ビジネスモデル」「リスクと機会」「ガバナンス」「将来展望」などです。

 

今回は、この中の「最高経営責任者(CEO)メッセージ」に焦点をあてます。投資家が、最高経営責任者(CEO)の発するメッセージをどのように企業価値評価の際に役立てるのか、チェックするポイントについて見ていくことにします。

 

  • 経営者の最も重要な仕事とは

 

経営者の仕事は、一言で言ってしまえば「資本配分の最適化」です。つまり、「『ヒト』『モノ』『カネ』『時間』『情報』『知識』『ネットワーク』など、限られた経営資源をいかに効率的に配分できるか」に、経営者の経営能力の違いが表れてきます。

 

経営者の経営能力を確かめるためには、最適な資本配分の根拠である「重要性の高い事項」に関する情報に目を向ける必要があります。「重要性の高い事項」とは、経営者が長期の観点から企業の価値創造において最も影響を与える事項であり、資本配分における優先度の高い事項として決定されます。

 

経営資源は限られているため、重要性の高い事項に配分する必要があります。そして、重要性の高い事項を、経営者がどのような思考とプロセスで決定したかについて知ることは、投資家が企業の価値を評価する上で非常に大切なポイントとなります。

 

この重要性の考え方については、インテルのディレクターのGary Nikerk氏は以下のように述べています。

重要性とは登山用リュックの荷詰めに似ている。

 

極めて重要なものだけを持っていくことができる。

 

そうしないと、重みでペースを落とし、最終的には動けなくなってしまう。

 

まさに、登山においては、不必要なものをなるべく排除し、本当に大事なものだけに絞りこむことが、目的を達成し、生きて戻ってくるうえでも重要です。逆を言えば、大事なものに絞り込めていないと、荷物の重みで体力は奪われ、目的を達成することができないだけでなく、生死を分けることもありうるのです。

 

企業は「継続していくこと」を前提に、ビジネスが成り立っています。そのような前提のもと、経営者は会社が存続していくために、本当に重要なものに絞り込む必要があるのです。この能力を、投資家は評価する目を持つ必要があります。

 

  • 統合報告書で重要性に関する情報をチェックする

 

先に挙げた統合報告書では、この重要事項とその決定プロセスについて確認することができます。なお、統合報告書による開示は、企業にとって「義務」ではなく、あくまで「任意」のため、これらの情報をまだ開示していない企業もあります。

 

経営者が重要な事項をどのように決定するかは、経営者によって異なります。1つの共通した正しいやり方が、存在しているわけではありません。

 

投資家・株主など外部の利害関係者との対話が進んでいる企業は、重要事項とその決定プロセスについての開示を行う事によって、情報の透明性を高め、投資家・株主との信頼関係を構築することに積極的です。

 

統合報告書重要事項と決定プロセスは、経営者の能力を判断する最も重要なポイントです。そのように認識している企業においては、最高経営責任者(CEO)メッセージの中で言及されている例もあります。

 

重要性に関連する情報が、「統合報告書の中でどのように位置づけられているか」にも着目してみてください。これは、経営者が「重要な事項に絞り込むことの必要性」をどのように認識しているかを知る手がかりとなります。

 

投資家は、まず、「経営者が長期の価値創造に影響をあたえる重要な事項を厳選することの重要性」を理解する必要があります。

 

その上で、最高経営責任者(CEO)メッセージを読み、重要事項やその決定プロセスが経営者の思考を反映した言葉で書かれているかを確認してみてください。