フリーキャッシュフローでシステムとしての企業価値を算出する

  • キャッシュの種類と一番重要なキャッシュ

 

キャッシュにはいくつか種類があります。「円」「ドル」「ユーロ」といった通貨の違いの事ではありません。企業活動から生み出されるキャッシュは、大きく3つに分類されます。それらは、「営業活動によるキャッシュフロー」「投資活動によるキャッシュフロー」「財務活動によるキャッシュフロー」です。

 

上記のキャッシュフローは、会社が開示している統合報告書の「キャッシュフロー計算書」において、金額等を確認することができます。

 

企業の経済的な価値を算出するためには、「フリーキャッシュフロー」が最も重要なキャッシュとなります。フリーキャッシュフローとは簡便的に、以下の方法で算出されます。

 

フリーキャッシュフロー=営業活動によるキャッシュフロー(+)投資活動によるキャッシュフロー

 

  • 企業価値の算出

 

フリーキャッシュフローとは、営業活動によるキャッシュフローと投資活動によるキャッシュフローを足した額のキャッシュです。

 

つまり、「本業から生み出したお金」から、「将来の投資に必要なお金」を差し引いて、それでもなおキャッシュが余った場合にフリーキャッシュフローとなります。これは、企業が自由に使えるお金です。

 

例えば、A社がB社を買収しようとするときなどの実務においては、B社をいくらで買えば妥当かを評価する必要があります。

 

まず、将来にわたり、どのくらいキャッシュを生み出す可能性があるのかを「見積もり」ます。次に、それらを現在価値に「割り引き」ます。最後に、現在価値に割り引いたそれぞれの価値を合計して、企業価値とする方法があります。これを、ディスカウンテッドキャッシュフロー法(DCF法)と呼びます。

 

「割り引く」という概念は、一般的な「値引き」とは異なります。ここでいう「割り引く」ことの意味を理解するには、まず、現在の1万円と1年後の1万円の価値が同等ではないということを理解する必要がります。あなたの手元にある1万円を銀行に預けた場合、1年後にいくらになっているかを考えてみてください。

 

現在の1万円は、仮に金利5%とすると、1年後には金利分が上乗せされ1万500円となります。逆を言えば、1年後の1万500円の価値は、現在の価値では1万円という事になります。将来のお金の価値を、現在の価値に戻して捉えることを「割り引く」と言います。

 

それでは、1年目100億円、2年目100億円、3年目120億円のキャッシュフローを見積もった場合はどうでしょうか。キャッシュは、時間によってその価値が変化します。そのため、1年目の100億円と2年目の100億円は同じ100億円ではありません。それらの価値を、すべて「現在」という基準点まで割り戻して合算できるようにします。

 

このDCF法を採用する際の「キャッシュ」とは、「フリーキャッシュフロー」のことを指しています。

 

  • システムとしての企業

 

DCF法によって企業価値を算定する際には、主に「予測期間」「予測フリーキャッシュフロー」「割引率」が必要となります。その他にも、様々な予測や前提条件を考慮して算出されることになります。

 

注意しておきたいのは、DCF法では、企業の価値を「将来にわたりフリーキャッシュフローを継続的に生み出していける能力」を評価した結果を企業価値とするものであり、フリーキャッシュフローそのものが企業価値ではないという点です。

 

あくまで、DCF法は、企業の長期にわたる価値創造能力をキャッシュを使って算出する方法の一つにすぎません。

 

企業とは、価値を創造するシステムです。システムの性能は、「将来にわたり持続的に価値を創造する能力」として評価されます。システムを評価するためには、キャッシュフロー計算書だけでなく、企業の戦略やビジネスモデルを理解する必要があります。

 

企業が開示している「統合報告書」などを活用し、システムとしての企業を包括的に評価することが大切です。また、企業と投資家の間に情報ギャップがあり、将来を予測するための戦略やビジネスモデルが明確でない場合は、企業側と建設的な対話の場を設けるなどして、適切な企業価値評価につなげていきましょう。