最高財務責任者(CFO)メッセージにおける3つのポイントとは

  • 中長期の価値創造に関する情報

 

投資家にとって必要な情報とは、企業の中長期の価値創造に関する情報です。企業の経営者が、中長期的な視点で経営を行わない限り、結局足元の業績もあがってこないからです。

 

企業の中長期の価値創造に関する情報として、簡潔にまとめてある情報の一つに「統合報告書」があります。

 

統合報告書は、財務情報ばかりに目を向けがちな投資家にとっては、より高い視点から中長期の企業の価値創造の姿を俯瞰するのに役立ちます。

 

統合報告書には、財務情報だけでなく、「企業の価値を創造する能力」や「企業の利益を稼ぐ能力」に関連する非財務情報が含まれています。

 

例えば、「最高経営責任者(CEO)メッセージ」「最高財務責任者(CFO)メッセージ」「戦略と資源配分」「ビジネスモデル」「リスクと機会」「ガバナンス」「将来展望」などです。

 

今回は、この中の「最高財務責任者(CFO)メッセージ」に焦点をあてます。投資家が、最高財務責任者(CFO)の発するメッセージをどのように企業価値評価の際に役立てるのか、チェックするポイントについて見ていくことにします。

 

  • 最高財務責任者(CFO)の役割

 

まず、最高財務責任者(CFO)の主な3つの仕事として、「資金の調達」「資金の運用」「投資家・株主への還元」があります。これらを切り口に、開示情報のなかかから見るべきポイントをあげていきます。

 

 

資金の調達

 

まず、「資金の調達」です。企業が事業を行っていく上で必要な資金の調達方法は、大きく2つあります。一つは、
銀行からの借入や社債など、元本に加えて利息の返済が必要な資金です。もう一つは、株主・投資家からの資本金がメインとなり、これは返済する必要の無い資金です。

 

もしビジネスがうまくいかず、借入金の返済ができなくなった場合、企業は倒産します。そのため、返済不要な資本である自己資本の比率をある程度確保しておく必要があります。このバランスをどこにとるかも、最高財務責任者(CFO)の仕事です。

 

自己資本比率=純資産÷(負債+純資産)

 

自己資本比率は誰でも簡単に計算することができます。さらに、最高財務責任者(CFO)が、この自己資本比率の水準についてどのように考えているのかを確認します。

 

過去の戦略やビジネスモデルとの関係で、「現在の自己資本比率が適切であるかどうか」「自己資本比率を決定する際の根拠は何か」「資金の調達コストをどのように下げていくか」「今後の戦略との関係で自己資本比率に変化が生じてくるか」などの説明の有無を確かめます。

 

資金の運用

 

次に、資金の運用です。最高経営責任者(CEO)の最も重要な仕事である資本配分の戦略的意思決定の際に、最高財務経営責任者(CFO)は、「資金をどのように有効活用するか」という「財務的な観点」からの情報を提供することによって経営者をサポートする必要があります。

 

財務的な観点からの情報提供には、単に財務の知識・経験だけでなく、「事業の将来性」「ビジネスモデル」「事業ポートフォリオやプロセス(開発/購買/製造/販売/マーケティング)」「強み・弱み」「競争優位性」といった「事業そのもの」についての深い理解が必要です。

 

つまり、最高財務経営責任者(CFO)が最高経営責任者(CEO)と、「目線の先を合わせられているか」も重要なポイントです。CFOメッセージから、過去・現在・未来における「事業活動の流れ」と「お金の流れ」が関連付けて語られているかにも目を向ける必要があります。

 

優秀な最高財務経営責任者(CFO)の育成と確保は、最高経営責任者(CEO)にとっても重要です。そのため、「さまざまな部署やプロセスでの経験を積ませる」「規模の小さい子会社での経営経験を積ませる」など、最高財務経営責任者(CFO)へのキャリアパスをきちんと整備している企業もあります。

 

最高財務経営責任者(CFO)の経歴から、上記のような経験の有無も確認してください。財務の知識・経験だけでなく、事業全般についての経験や理解があるかどうかも大切なチェックポイントとなります。

 

投資家・株主への還元

 

3つ目の役割は、「投資家・株主への還元」について、投資家・株主と対話(コミュニケーション)を行うことです。投資家・株主は、投資のリターンの一つとして、配当を受け取ることを期待しています。

 

会社が稼いだ利益の内、配当にまわす割合を「配当性向」と言います。「配当性向を何パーセントに設定しているか」「配当性向に変更はあるか」「変更があった場合の理由は妥当か」などをチェクします。なお、日本の上場企業の平均は30%弱となっています。

 

利益の配分方法としては、「株主への配当」の他に、「事業拡大を見据えた長期投資」が投資家にとっても重要です。

 

そのため、最高財務責任者(CFO)メッセージの中で、「持続的な成長のための長期投資」と「定期的な株主還元」を行うこととのバランスがとれているかもチェックすべき大切なポイントです。

 

最高経営責任者(CEO)は、適切な資本配分のための判断・意思決定に集中し、長期の価値創造を実現ための環境が必要です。その環境づくりのためには、優秀な最高財務経営責任者(CFO)のサポートが不可欠です。

 

上述したように、最高財務責任者(CFO)の役割に照らし合わせて、「最高財務責任者(CFO)メッセージ」で見るべきポイントを押さえ、企業の長期の価値創造能力を評価する上での情報として役立ててください。