- 企業の収益性を測る
人が体力テストを行う際には、「握力」「筋力」「柔軟性」「平衡性」などいくつかのチェック項目があります。企業も同じ様に、「収益性」「成長性」「生産性」「安定性」といった観点を中心に分析します。
最初にチェックする必要があるのは、企業の稼ぐ力を判断するための「収益性」です。収益性を判断するには、「利幅」と「お金を回収するスピード」の2つのバランスが重要な要素になります。
- 収益性の高い会社は、「利幅が大きく」、「お金を回収するスピードが速い」
「利幅が大きい」ビジネスとは、なるべくお金をかけずにモノや商品を作り、なるべく高く売ることです。また、「お金を回収するスピードの速い」会社とは、商品やサービスを受注して、代金を回収するまでの期間が短いことです。
例えば、座り心地のよいソファーのあるカフェAと、座面が堅くて高い椅子のあるカフェBを想像してみてください。カフェAでは、一杯のコーヒーが500円します。一方の、カフェBでは、一杯のコーヒーは100円です。もしも原価がほぼ同じであれば、カフェAの方が利幅は大きくなります。
それではお金を回収するスピードはどうでしょうか。
カフェAではお客さんがコーヒーを注文してから、座り心地の良いソファーでくつろぎ、代金を支払ってお店をでるまでの時間は、30分でした。一方の、カフェBでは、硬い椅子に長時間座ることができず、注文から支払までは5分です。この場合は、カフェBの方が、お金を回収するスピードが早いと言えます。
このように、利幅が低い場合でも、回収のスピードが高ければ、カフェAよりもカフェBの方が収益性が高い(いわゆる薄利多売)ということもありうる、ということです。そのため、収益性を判断するためには、この2つの要素「利幅」と「お金を回収するスピード」が重要であることが分かります。
- 売上高利益率と総資本回転率
まず最初に、「利幅」についてみていきましょう。利幅は、「売上に対する利益の割合はどのくらいか」を表す「売上高利益率」を計算します。
売上高利益率=利益/売上高 |
売上高利益率の数値が高ければ高いほど、利幅の高いビジネスを行っていることが分かります。
次に、「お金を回収するスピードの速さ」についてです。これは、「会社のお金(=資本)をどのくらい効率よく活用したか」をみる「総資本回転率」を計算します。
総資本回転率=売上高/総資本 |
売上高が、会社が銀行や株主から調達したお金である総資本の何倍かを計算することにより、総資本を何回転させているかを求めています。回転率は高ければ高いほどよく、お金の回収のスピードが速いことを示しています。
- 収益性の総合力
また、これら2つの指標を掛け合わせた「総資本利益率」を求めることにより、収益性の総合力をみることも可能です。
総資本利益率=(売上高利益率)×(総資本回転率)=(利益/売上高)×(売上高/総資本)=利益/総資本 |
これらの指標は企業の「収益性」を把握する重要な指標です。しかし、「収益性」とは、いくつかあるチェックポイントの一つであることを認識する必要があります。企業を評価する際には、他のチェックポイントも踏まえ総合的に判断する必要があります。