攻めと守りで異なるガバナンスの役割:投資家が見るポイント

ガバナンスとは

 

長期の視点で企業を評価し、投資判断を行っている長期投資家にとって、重要な判断材料の一つに企業のガバナンスが挙げられます。

 

ガバナンスとは、企業統治と訳されることが多いです。ガバナンスの役割は大きく二つに分けられます。一つ目の役割は、企業不祥事を防ぐことで、「守りのガバナンス」と呼ばれています。そしてもう一つの役割として、企業の収益力を強化することがあり、「攻めのガバナンス」と呼ばれています。

 

この「守りのガバナンス」と「攻めのガバナンス」は、自動車の運転でいう「ブレーキ」と「アクセル」に例えられることがあります。2つのバランスやタイミングが重要であると言えるでしょう。

 

企業のガバナンスは、「企業が持続的に成長していけるかどうか」「中長期的に企業の価値を向上していけるかどうか」に影響してきます。そのため、投資家は企業が開示する情報や、企業との対話から、ガバナンスが効いているかどうかを適切に判断する必要があります。

 

ガバナンス・コードとは

 

企業のガバナンスを構築する上で指針となるものとして、「ガバナンス・コード」があります。投資家にとっては、企業のガバナンスを理解して分析する上での枠組みとなります。

 

ガバナンス・コードには、前述の「守りのガバナンス」と「攻めのガバナンス」の二つの役割を果たすための主要な原則が5つにまとめられています。

 

上場企業はこのガバナンス・コードを適用しなければいけません。「適用する」という意味は、以下に挙げる5つの基本原則を「実施する」または「実施しない場合はその理由を説明する必要がある」ということを指しています。

 

1 株主の権利・平等性の確保
2 株主以外のステークホルダーとの適切な協同
3 適切な情報開示と透明性の確保
4 取締役会等の責務
5 株主との対話

 

企業のガバナンスを理解するために統合報告書を入手する

 

では、投資家はガバナンスについての情報をどのようにして入手すればよいのでしょうか。例として、前述のガバナンス・コードの「3 適切な情報開示と透明性の確保」という原則に焦点を当てて考えてみたいと思います。

 

上場企業のガバナンス情報を知る一つの手段として、各企業から公表されているガバナンス報告書があります。ただし、多くの企業は東京証券取引所から出されているテンプレートに沿って開示をしているため、横並びの情報が散見されます。

 

現時点では、ガバナンス報告書からのみでは、各社のガバナンスの実態を適切に把握することは困難だと言えます。

 

企業のガバナンスを適切に理解するには、長期的な価値創造をする全体像の中での位置づけを踏まえる必要があります。このような情報を入手するには、各企業から発行されている統合報告書を入手すると良いでしょう。

 

統合報告書では、企業から開示することが望ましいとされる内容について、「組織概要と外部環境」「ガバナンス」「ビジネスモデル」「リスクと機会」「戦略と資源配分」「実績」「見通し」といった項目が挙げられています。

 

統合報告書はその名の通り、上記の項目が統合された形で開示されることを求めています。言い換えると、企業は情報間の関連性を示してストーリーとして開示する必要があります。

 

統合報告書では、組織のガバナンス構造について「どのように組織の短、中、長期の価値創造能力を支えるのか」を記載することが望まれます。

 

投資家が企業のガバナンスを理解する上で、「どのようなガバナンス構造になっているか」「誰がメンバーか」ということも基礎的な情報として重要です。しかし、投資家がより重点的に見るべきポイントは、包括的な観点からです。

 

例えば、企業のガバナンスが「戦略を実行する上でどのように機能しているのか」「パフォーマンスにどのように影響しているのか」「情報間のつながりに一貫性や整合性があるか」といったポイントです。これが、企業のガバナンスが適切に効いているかどうかを確認する出発点となります。

 

統合報告書について、まだまだ企業の取り組みとしては始まったばかりです。ガバナンスについての情報開示も十分でない部分があります。統合報告書において、一貫性や整合性が取れていない場合などは、投資家側から積極的な対話を通じて互いの理解を深め、改善のリクエストをすることも大切です。