財務数字と戦略をつなげ企業の未来への投資スタンスを確認する

  • 「成長」のためには「投資」が必要

 

企業の積極的な投資は、企業が将来にわたり成長していく上で重要です。また、投資家にとって、企業が適切に資本配分を行い、将来リターンを確実に生み出していけるかどうかは関心が高いでしょう。

 

「成長」という言葉の意味を改めて考える必要があります。「成長戦略」はあらゆる企業で使われている言葉です。しかし、「何の」成長を経営者が意味しているのかを理解しないと、正しい分析ができません。

 

  • 「投資」「売上」「利益」の観点から分析する

 

財務的な観点からは、主に「売上」と「利益」の成長に焦点があてられ、その伸び率を見ることによる分析が多いです。例えば、「売上高成長率」や「経常増益率」の増収率を使います。売上と利益の組み合わせは、以下の4つに分けることができます。

 

 

理想的には、「増収増益」です。しかし、戦略やタイミングによって、利益を犠牲にしても、規模の拡大を目指すために売上高の伸びに焦点をあてることもあるでしょう。分析の際には、「売上」と「利益」を個別に分析するのではなく、2つの関係性を捉える必要があります。

 

また、売上や利益の成長の源泉である「投資」が、適切な水準であるかも押さえておく必要があります。限られた経営資源の中で、企業の成長のためとはいえ、無制限に投資をすることは不可能だからです。適切な範囲で投資を行わなければ、成長の前に、キャッシュが回らず企業が倒産する可能性もあります。

 

  • 成長パターン

 

「成長のための投資」と「売上高」や「利益」は、植物の成長に例えると、「根」と「芽」や「果実」の関係です。植物の種子が発芽する際には、まず「根」が重力を感じて下に伸びていきます。続いて、芽は、光を感じて上に向かって出ます。その後、上手く育てば、花をさかせ、実を付けます。

 

まず根がなければ、芽は出ず、実を結びません。根が水を運び、芽は葉をつけ日光を浴びて光合成を行います。このように、根と芽は、互いに逆向きでつながり成長しています。

 

「成長のための投資」は植物の「根」です。「芽」は「売上」であり、「実」は「利益」です。売上や利益をプラスにするためには、「成長のための投資」はキャッシュフロー的にはマイナスの影響を与えます。

 

この関係は、植物の「根」が下に伸び、「芽」が上に伸びることと似ています。これは、企業の成長パターンとして、「キャッシュフロー計算書」でも見られるチェックポイントの一つです。

 

  • キャッシュフロー計算書のチェックポイント

 

キャッシュフロー計算書は、企業のキャッシュの一年間の動きを「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つの切り口で捉えたものです。

 

健全な企業かどうかを判断する一つの確認方法は、「営業活動によるキャッシュフローがプラスであること」「投資活動によるキャッシュフローがマイナスであること」です。

 

まず、「営業活動によるキャッシュフローがプラス」である場合は、本業で売上や利益をあげた上で、代金がきちんと回収できていることを意味しています。

 

また、「投資活動によるキャッシュフローがマイナス」である場合は、企業が未来に向けた投資をきちんと行っていることを意味しています。

 

この際、投資活動によるキャッシュフローの範囲が、営業活動によるキャッシュフローの範囲を超えて行っていないことを確認することも重要なポイントです。これが、投資が適正な水準であるかを見極める一つのポイントです。

 

以上のように、企業の開示している財務的な情報から、「企業が将来の成長のために積極的に投資を行っているか」「またその投資の水準は適切であるか」を把握することができます。

 

ただし、財務的な情報は過去の情報がほとんどであることに注意が必要です。企業の成長は未来の話のため、「経営者がどこにどんな種をまくのか」といった「戦略」や「ビジョン」が、成長の「根拠」として納得のいくものなのかどうかも確認してみてください。