企業の利益と将来性:期間損益にこだわることによる歪み

企業は継続することが前提

 

「銀行からの融資」「株主からの出資」「取引先との取引」は、企業が「将来にわたり無期限に事業を継続すること」を前提に行われています。この前提のことは、「継続企業の前提」「ゴーイング・コンサーン(going concern)」などと呼ばれています。

 

「企業は継続するもの」という前提が崩れる場合は、例えば企業が持っている資産の額を超えて、借金をしているような場合です。これを超過債務といい、すべての資産を売却しても借金を返済できない状況をしめしています。

 

また、本業からの稼ぎをしめす営業利益が継続的にマイナスの場合なども、「継続企業の前提」が疑わしい場合として該当します。

 

これは、バケツの底に穴が開いているにもかかわらず、水を流し続けるような状況です。つまり、どんなに頑張っても、「モノやサービスが売れていない」、もしくは「たとえ売れても利益やキャッシュがたまらなくなっている」状況です。キャッシュが無くなれば、返済の必要な借金返せなくなり、企業は倒産します。

 

企業の事業活動は、「継続企業の前提」のもと、常に変化しつづけています。まさに、「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」なのです。

 

期間対応

 

一方、企業の儲けを測るものさしである利益の計算は、その企業の流れの「ある1年間」を切り取って計算したものとなります。

 

たとえば、日本の企業が利益を計算するために設けた決算期は3月が多いため、3月決算の企業においては、「XX年4月1日~XX年3月31日」が「ある1年間」となります。

 

ある一定期間の儲けまたは損失(=期間損益)を計算する主たる目的はなんでしょうか。それは、企業に融資をした銀行や出資をした株主に対して、稼いだ利益を適正に分配するためです。

 

期間損益を正しく計算するためには、単に現金の出入りだけをみているだけでは把握することができません。例えば、3月期決算の企業において、100万円の商品Aが3月31日に現金ではなく「掛け」で売れた場合、新しい決算期が始まる4月以降の特定の時点まで入金を確認することはできません。
期間損益を正しく計算するために、「現金による入金の有無に関係なく、売れたものは売れた時点での売り上げとする」「「費用は現金による支払時ではなく発生時に費用として認識する」といったように期間に対応した処理(期間対応)が必要となります。決算大セールなど、3月に企業が行うのもこのためです。

 

一方で、会計上の期間対応には限界があります。その限界を踏まえたうえで、数値を扱うことが必要となります。

 

資産となるか費用となるか

 

企業が事業活動において必要な支出には、2種類あります。それらは、「資産となるか」「費用となるか」の違いです。

 

資産とは、「現在所有している企業の資産の使用期間(寿命)を延ばす」「生産性」を高める修繕費のほか、将来的に企業に収益をもたらす活動なども該当します。

 

これらの資産は、将来の期間にわたって費用として認識することになります。つまり、一旦資産として認識され、徐々に費用として処理されることになります。

 

一方で費用とは、企業の活動において発生した当期負担分のコストです。これは、損益を計算する際に直接的に影響してきます。

 

資産になれない見えない活動

 

企業の将来価値の源泉である活動の一つに、研究開発があります。これを資産(無形資産)として計上するには、「識別可能であるか」「支配可能であるか」「企業に将来の経済的便益をもたらすことが期待できるか」といったいくつかの条件を満たす必要があります。

 

もし上記の条件を満たさない場合は、全額費用として処理されます。そして多くの場合、研究開発費は資産としての条件を満たすことが困難なため、費用として処理されることが大半です。ここに会計処理による「期間損益」の限界があります。

 

損益計算書上の数値だけをみては、企業の将来性を十分に理解し、把握することが困難です。企業が継続していくためには、投資家が適切に企業の将来価値を評価する必要があります。

 

そのため、数値に現れてくる客観的な企業活動の結果だけでなく、実態としてどのような活動が行われているのかにも目を向けることが大切です。

 

研究開発以外にも、財務情報として認識されない多くの重要な活動を企業は行っているからです。そのため、財務情報以外の情報も踏まえ、企業をまるごと評価する視点が投資家にとって重要となります。