会社の本質的価値から、企業の戦略やトップの考えを捉える

本質的価値とは

 

「価値」という概念については、さまざまな定義が存在します。投資の世界では、経済的な側面にのみ焦点を当てた「本質的価値」という考え方があります。本質的価値は、簿価(ぼか)との比較によって投資すべきか否かを判断する上での材料として使います。

 

「本質的価値」とは、「あるビジネスが今後継続する期間において生み出すであろうキャッシュの金額を見積もり、それを現在価値に割り引いた金額」と定義づけられています。

 

本質的価値を計算するとき、「ビジネスが継続する期間の見積もり」「キャッシュフローの見積もり」「割引率の変動」といった仮定や変動要因が存在します。一つの正しい答えがあるわけではなく、あくまでも「見積もり」であることが一つの注意点です。

 

簿価と本質的価値を比較する

 

例えば、Aさんが何らかの資格を取得しようと考えていたとします。資格取得にかかる費用を「簿価」と考えます。資格を取得する過程で、学んだことや出会った先生・仲間といったものが後々のAさんの財産になる場合もあるでしょう。しかし、簿価と本質的価値を計算する上では、経済的な価値にのみ焦点を当てていきます。

 

まず、「Aさんが資格取得後の人生においてどのくらい収入を得られるか」を見積もります(1)。次に、「もしAさんが資格を取得していなかった場合には、どのくらいの収入を得られていたか」を見積もります(2)。

 

(1)から(2)を差し引くことで、超過収益の額を計算することができます。さらに、この金額を適切な利率で、資格取得時まで戻って割り引きます。この計算の結果得られた金額が、Aさんの資格取得に対する本質的な経済価値となります。

 

中には、簿価が本質的価値を上回ってしまう人もいるでしょう。この場合は、資格取得に支払った金額に対して、それに見合うだけの価値を得られていないことを意味します。言い換えれば、「元を取れていない」といえます。

 

逆に、本質的価値が簿価を上回っていれば、賢く資金を投入し「元が取れた」ことの証明になります。いずれの場合も、本質的価値と比較をしないと、簿価だけでは意味を持たないことが分かります。

 

企業を立体的に捉える

 

前述の通り、本質的価値とは経済的な側面にのみ焦点を当てた考え方です。ある意味、ペンと紙があれば計算できてしまう2次元の世界における価値と言っていいでしょう。ただし、リアルなビジネスの価値は、より立体的に捉える必要があります。

 

本質的価値はあくまでも見積もりのため、さまざまな「将来の要因」によって変動する可能性が高いといえます。将来の要因には、企業がコントロール「できるもの」と「できないもの」があります。このとき、企業の情報開示の主要な媒体である統合報告書で「企業のトップがどのような言葉を使っているのか」に着目してみてください。

 

例えば業績が悪いときに、「景気が悪いから」「業界全体がダメージをうけているから」といった自社の外に理由づけするケースがあります。これらは、「会社がコントロールできないものであり仕方がない」という言い訳でしかありません。

 

自社と未来は変えられますが、他社と過去を変えることはできません。本質的価値を見極めるためには、企業としておかれている状況に対して、どのように戦略やビジネスモデルを通じて「影響を与えられるか」といった点に言及している経営者の言葉を捉えていく必要があります。