最適資本構成を探る:負債と資本の最適な組み合わせのポイント

資金調達コストの種類

 

財務的な観点から企業価値を最大化するためには、リターンを生み出すだけでなく、リターンがコストを上回るものでなければ意味がありません。コストとは、リターンを生み出すための活動に必要な資金を調達するためのコストです。

 

一般的な資金調達の種類は、大きく2つあります。

 

それは、銀行からの借入や社債など、元本に加えて利息の返済が必要な資金である「負債」と、返済する必要のない株主・投資家からの「株主資本」です。この2つでは、求めるリターンが異なります。

 

資金提供者にとってのリターンは企業にとってのコストです。つまり、資金調達の種類によって求められるリターンが異なるということは、企業にかかる調達コストも異なるということです。

 

それでは、この2つの資金をどのような割合で調達すれば、コストを抑え最も効率的に利益を上げることができるのでしょうか。

 

バランスが重要

 

まず押さえておきたいのは、銀行と株主におけるリスクの違いです。通常、銀行への利息や元本の返済は、株主への配当より優先されます。企業が倒産してしまった際にも、まず先に銀行へ弁済し、その残りがあれば株主へ分配されます。

 

さらに株式投資は、場合によっては元本割れする可能性があるため、リスクが高いと言えます。当然、リスクが高い分、株主はリターンを大きく求めます。

 

そのため、企業側から見れば株主から資金を調達するときのコスト(資本コスト)は高くなるため、資本コストは負債コストよりも高くなります。負債コストとは、負債を返済する際にかかる利息のことを指します。

 

負債コスト < 資本コスト

 

さらに負債コストは、節税のメリットもあります。借入に対して支払われた金利分は、経費として計上されます。そのため、税金を計算する前の利益はその分減ることになります。利益が減れば納める税金も、金利分だけ減っているというわけです。

 

このように、節税という視点で考えると、銀行に支払うべき金利の額が減るわけではありません。しかし、トータルでみると納める税金が減った分、コストが抑えられます

 

例えば、「税率40%」「調達資金100億円」「年率10%」という条件で借り入れを行った時の実質的な負債の調達コストは以下の通りです。

 

負債コスト=10%×(1-40%)=6%

 

このように資本コストより負債コストの方が低いのであれば、「負債を増やせばよいではないか」と思われるかもしれません。

 

また、業績の良い会社が無借金経営の場合、株主からは借り入れによる資金でレバレッジを利かせた経営を求められることもあります。つまり、銀行から低いコストで借り入れ、コストを削減することで、利益を効率的に生み出してリターンを増やしてほしいという要望です。

 

しかし、負債ばかりが増えると、事業がうまくいかなかったときに返済ができなくなり、倒産リスクが高くなります。

 

悪循環を回避する

 

企業の倒産リスクが高まれば、株主がとるリスクも高まります。リスクが高まると、株主が求めるリターンはさらに高まります。

 

つまり、株主からの調達コストが高くなり、全体としての調達コストがより高まるという悪循環に陥ります。そのため、負債コストと資本コストの最適な組み合わせのポイントを見極める必要があるのです。

 

最適な資本構成は、「MM理論」とよばれる理論を使って理論上の値を算出することは可能です。ただし、最適資本構成について、一つの明確な答えは存在しません。

 

一般的には、返済不要な資本である自己資本の比率をある程度確保しておく必要があります。自己資本比率(=純資産÷(負債+純資産))は、企業や業種または戦略によって適正な比率は異なります。

 

自己資本比率の一般な平均は20 ~30%程になり、40%を超える企業は倒産の危険が低いとされますので、これらは最適な資本構成を判断する上での一つの目安となります。

 

また、企業は「手元のキャッシュの水準が適切か」「借り入れをしてでも成長投資にかけるか」「どのくらい負債を増やしたら格付けが変化するか」「それによって株主の要求リターンがどのように変化するか」ということも考慮しなければなりません。

 

以上のように、さまざまな要因を考慮した上で、その企業に合った資本構成を考えることが大切です。