パッシブ運用とアクティブ運用:「企業との対話」での相違点

運用手法の違い:アクティブ運用とパッシブ運用

 

銀行、保険会社、証券会社が扱う金融商品の一つに、投資信託(ファンド)があります。

 

不特定多数の方から集められた資金を大きな一つの資金プールとして、投資信託(ファンド)はこれを株式や債券などに分散して投資を行います。そして、この分散投資から得られる運用益を、投資家に還元します。

 

投資信託(ファンド)は、運用手法の違いによって「アクティブ運用」と「パッシブ運用」の二つに大きく分けることができます。

 

二つの運用の分かれ目は、日経平均株価を基準値とすることを意味する「ベンチマーク」との差の大きさによります。

 

ベンチマークを上回るパフォーマンスを目指す場合は、アクティブ運用になります。一方、ベンチマークと連動するパフォーマンスを目指す場合は、パッシブ運用となります。

 

アクティブ運用 パフォーマンス>ベンチマーク
パッシブ運用 パフォーマンス=ベンチマーク

 

アクティブとパッシブの英語の意味について見てみると、アクティブは「積極的・能動的」という意味を指しています。その反対に、パッシブとは「受動的・消極的」という意味になります。

 

アクティブ運用においては、ファンド運用者による積極的な投資銘柄の選択が行われます。また、調査・分析に対する解釈能力や売買のタイミングといった多くの判断も求められます。

 

また、調査・分析に多大なコストを掛けるビジネスモデルであるため、企業との対話の機会を積極的に設けることが可能です。

 

一方のパッシブ運用では、一旦ポートフォリオを構築したら日経平均に連動することを目指して、資金の増減や構成銘柄の変化に対応した売買をする程度です。また、パッシブ運用では、調査・研究に費用をかけることなく、機械的な選択が行われることが多いです。

 

しかし、運用スタイルはパッシブでも、投資先へのモニタリングはアクティブ(積極的)に行っていく必要があります。

 

パッシブな運用で行うアクティブなモニタリング

 

米国最大の公的年金基金であるカルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金の略)は、パッシブ運用の一例です。

 

カルパースの運用手法のメインはパッシブですが、投資先企業に対する姿勢はアクティブです。投資先企業のガバナンスに対する要望を積極的に伝えるため、「もの言う株主」の代表格とされています。

 

具体的には、「株主総会での議案に対して、株主が賛否を投票する権利」である「議決権」を活発に行使することによって、カルパースの要望を経営に反映させています。

 

この権利を行使する際の対象になるものには、「利益処分に関するもの」「取締役会・監査役会に関するもの」「企業合併などに関するもの」「資本構成に関するもの」などが挙げられています。

 

また、カルパースはこの議決権行使にとどまらず、企業との対話も積極的に行っていくことを重視しています。例えば、「カルパースの信念(CALPERS Beliefs)」として公表されている資料の中で、「カルパースと投資先企業の利益を調整する主要なツール」としてガバナンスが強調されています。

 

投資先企業とガバナンスについて対話(エンゲージメント)する内容には、以下の項目が挙げられています。

 

  • ガバナンスの実施状況
  • リスクマネジメントの実施状況
  • 人的資本の実施状況(公正な労働条件、健康と安全、契約責任や多様性など)
  • 環境への対応(気候変動や天然資源の入手可能性)

 

パッシブ運用は日経平均と連動しているため、「中長期的な変動バランスの結果、短期的なリスクを上回るリターンを稼ぐこと」を前提にしています。

 

ただし、パッシブ運用者が「何もしない」でいると、運用パフォーマンスが中長期的に下がり続けるリスクが大きくなります。その結果「中長期的にバランスが保たれる」という前提が崩れる可能性が大きくなり、企業の中長期的な経営のパフォーマンスにポジティブな影響を与えることができません。適度な投資家からの圧力は、企業が中長期的に成長する上で必要なのです。

 

この「中長期的にバランスが保たれる」前提を崩さないためには、パッシブ運用者であってもカルパースのように企業とガバナンスについての対話が重要であると言えます。投資先企業のガバナンスについて改善を要求することは、運用者側のガバナンスの効果を高めることでもあるからです。

 

つまり、アクティブ運用のみならず、パブ運用においても企業との積極的な対話が必要となってくるのです。