投資家の「忍耐」が問われるペイシャントキャピタルとは

資本には長期と短期がある

 

企業が資金を調達する際には、主に銀行からの借り入れ(負債)と、株主からの投資(資本)で行われます。

 

銀行からの借り入れの場合、元本に加えて利息の返済が必要な資金です。いずれ返済をしなければならない借り入れに対し、株主からの資本は返済の必要が無い資金とされています。

 

返済する必要のない資金とはいえ、資本は株主の求めるリターンの種類によって、短期的な資本と長期的な資本に分けることができます。

 

ベンチャー・キャピタル

 

まず短期的な資本には、ベンチャー・キャピタルが挙げられます。キャピタルとは資本を意味し、ベンチャー・キャピタルとは、ベンチャー企業のための資本です。

 

ベンチャー企業は、「新技術」「新事業」「高度な知識」を開発し、革新的な経営を展開する比較的規模の小さい企業の事を指します。

 

ベンチャーキャピタルとは、このベンチャー企業の革新性及び成長性に対して投資をし、経営のアドバイスなどもしながら、上場に至るまで投資先の企業価値を高めていきます。

 

ベンチャー企業の成功は不透明であるため、リスクは非常に高いといえますが、そのかわり成功すればリターンが大きく、ハイリスク・ハイリターンの投資といえます。

 

ベンチャーキャピタルは、ベンチャー企業が上場を達成した後、株式を売却します。投資先企業の成長性によっては、株価が投資額の3倍、5倍、10倍となることもあり、上場前後の株式の価格差によるハイリターンを狙うことができます。

 

ベンチャー企業の場合、短期に多額の資金調達をし、なおかつすぐに返済する必要のない資金を必要としています。

 

ベンチャー企業のような革新性の高い事業では、成果がでるのに時間がかかり、定期的に返済する必要がある銀行からの借り入れは経営を圧迫するするケースが多いからです。場合によっては、返済が滞ってしまったために、道半ばにして一気に倒産に追い込まれるという事もあり得ます。

 

また、ベンチャー企業は、上場までのスピードが一つの成功の要因でもあり、短期に多額の資金を調達したいベンチャー企業の資金需要と、上場後すぐにハイリターンを実現したいベンチャーキャピタルの資金供給はマッチしていると言えます。

 

ペイシャント・キャピタル

 

一方、長期的な資本には、ペイシャント・キャピタルという資本があります。ペイシャントというのは、「忍耐」や「寛容」を意味します。ペイシャント・キャピタルとは、短期的なハイリターンを求めるベンチャーキャピタルとは対照的に、長期的に企業を支援し、あえて短期的なリターンをもとめないというタイプの資本です。

 

もともとは、BOPビジネスの支援を行う際に使われた概念でした。BOPとは、ボトム・オブ・ピラミッドの略で、低所得層を意味しています。BOPビジネスとは、収益を確保しながら、貧困層の社会的課題の解決を目的としている事業活動です。

 

BOPビジネスにおけるペイシャントキャピタルでは、短期的なリターンをもとめないどころか、全くリターンを求めないケースも含まれていました。このようなケースは、社会的リターンの最大化を目的としており、博愛主義的な考え方に基づく投資といえます。

 

あらゆるビジネスにおいて必要な「忍耐強い資本」

 

一方、近年のトレンドとしては、BOPビジネスに限らず、あらゆるビジネスにおいてペイシャントキャピタルを呼び込むことが、企業価値の最大化において重要となってきています。

 

投資家側が短期的な投資機会を追求することで、企業側も徐々に短期的な利益追求に走り、経営の短期志向化が促進されていました。そのため、財務諸表上は短期的に利益が出ているにもかかわらず、企業経営者は「長期的に価値を創造する」という観点を失う、という状況に陥っています。

 

本来、利益とは企業が価値を生み出して始めて実現されるものです。短期的な利益にとらわれ、長期的な価値を生み出していないにもかかわらず、利益が財務諸表上出ている場合、それは本来の利益ではない可能性を疑う必要があります。まともなやり方で得た利益ではない「浮利」である可能性が高いのです。

 

本当の利益を継続的に得る為には、企業が長期ビジョンを持ち、長期に投資ができる長期資本を集める必要があります。投資家は、企業が「どのような価値を生み出し続けていけるかどうか」を判断したうえで、忍耐強く企業の成長を見守っていくことが大切です。