長期的視点での経営を阻む「現在バイアス」の影響と対策

短期志向がもたらすもの

 

2009年に起きた世界的な金融危機は、アメリカの大手証券会社であるリーマン・ブラザースの破綻が発端となったことから、通称リーマンショックと呼ばれています。

 

リーマンショックの要因の一つには、投資家の短期志向が挙げられています。短期志向とは、企業の当期利益など短期的な成果を重視する動機づけが働いていることです。

 

しかし短期的な志向に陥るのは、投資家だけではありません。

 

多くの人にとって、「目先の利益は過大に評価する一方で、将来の利益をおろそかにしてしまう」といったことは、日常の生活や職場でも頻繁に起こることです。これを、行動経済学の世界では、「現在バイアス」と呼ばれています。

 

今回は、この「現在バイアス」による影響と、対策についてみていくことにしましょう。

 

現在バイアスとは

 

人は、目先のことばかりに気をとられたり、優先してしまう傾向があります。

 

例えば、あなたが職場や人間関係で何らかの悩みを抱えているとしましょう。頭の中は、その悩みのことで占拠されていないでしょうか?そして、その他やらなければならないことがあっても、緊急性がない事柄については、後回しになってしまいます。

 

それは、その悩みが今起きていることによって、実際の重大性とは関係なく、大きく見えてしまうからです。その証拠に、あなたは1年前の今日、何で悩んでいたか覚えていますか?

 

忘れている人がほとんどです。つまり、今とてつもなく大きく思える悩みも、1年後や2年後には、なぜあんなに大きな悩みだったのか分からなくなります。

 

このように、「現在」という時点から近い事象を重視して優先する思考のゆがみが、「現在バイアス」です。現在バイアスにより、過去でも未来でも、現在からの距離が近ければ近いほど、気になってしまうため、注意が必要です。

 

ビジネスにおいても、当期利益や、直近3年間の過去や未来の利益がどうなるかに関心が集まります。それらは現在に近いため、思考のスペースを大きく占拠してしまいます。そうすると、些末なことでも重大に見えてしまいます。

 

その結果、直近のことに思考思考をとられるため、長期的な視点が持ちにくくなります。つまり、将来への投資を後回しにし、今目の前にある利益の最大化が優先されることになります。

 

そして、企業は、長期的な価値を毀損するという代償を払うことになります。このように、現在バイアスは企業価値へ大きな影響を与えます。

 

現在バイアスへの対策

 

現在バイアスは、無意識に行われる思考パターンであるため、意識するだけで大きく変化することができるようになります。

 

意識するためのポイントは、視点の高さと長さを変えることです。現在バイアスによって、人は近視眼的なものの見方に陥ります。そのため、鳥のように、より高い位置からものごとの全体像捉える見方を意識するようにします。

 

鳥瞰的なものの見方においては、企業の短期的な財務成果だけでなく、財務成果の根拠である「ビジョン」「戦略「リスクと機会」「ビジネスモデル」「ガバナンス」といった情報にも目を向ける必要があります。

 

また、直近3年間という短期間の過去や未来だけでなく、その企業がどのようなビジョンや理念で創業し現在にいたるのか、また、現在からどのくらい長期のビジョンを掲げているのかといった時間軸をより長く捉える必要もあります。

 

まずは、人はだれでも短期的な事象に視点や思考や心を奪われてしまうことを認識しましょう。その上で、意識的に長期の視点でものごとを捉え、真に重要性の高いものは何かを的確に判断することが大切です。