投資と投機の違い:リターンとリスクの観点から

投資と投機の違い

 

投資と似た資本提供活動に「投機」というものがあります。しかし、投資と投機の違いは必ずしも明確ではありません。そこで、「リターン」と「リスク」の観点からその違いについて見ていきたいと思います。

 

まず、「期待するリターンの種類」に光を当ててみます。リターンには、「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」の2種類があります。

 

インカムゲインとは、株式を保有する期間に生じる収入であり、配当や利子などがこれに該当します。これは、継続的な収入だといえます。一方、キャピタルゲインとは、株式の売買によって得られる売却益のことです。株価の価格差によって得られる一時的な収入です。

 

投資家は、株を保有している期間において受け取る配当であるインカムゲインを期待する傾向にあります。一方の投機家は、株を売買することによって得られる収益であるキャピタルゲインを期待する傾向にあると言えます。

 

では、「取っているリスク」の違いについてはどうでしょうか。リスクとは不確実性のことです。不確実性とは、期待されるリターンの最小値と最大値の間の距離(振れ幅)によって、その確率が左右されます。リターンの振れ幅が大きいと不確実性が高くなり、小さいと不確実性が低くなります。つまりこのリターンの振れ幅に応じて、リスクの大小が決定されます。

 

投資家は、「投資先企業の事業がうまくいくかどうか」という不確実性に対してリスクを取っています。そのため、主に企業の事業での成功に左右されます。また、比較的長期間に投資を行うことで、運用成績の良い時と悪い時がならされ、平均的なリターンの最大値と最小値の幅(ブレ)が狭まり、リスクを小さくすることができます。

 

例えば、株価1万円のものを100株(100万円分)買ったとします。1年目のインカムゲインである配当が0円だったとしても、2年目に配当が10万円、3年目に20万円であれば、平均して10万円のリターンが得られます。

 

また、このリターンを再投資することによって、より大きなリターンを雪だるま式に得ることも可能です。

 

一方、投機家は「株価の変動」に対してリスクを取っています。投機家にとっては、短期間の間にリターンの最大値と最小値の幅(ブレ)の大きいものの方が、より大きなリターンを得る可能性が高くなります。同時に、失敗するとより大きな損失を被る可能性もあるということです。

 

例えば、同じように株価1万円のものを100株(100万円分)買ったとします。そして、株価が1万円から3万円の間で変動していたとします。もし株価3万円の時に売却できれば、短期間で200万円(売却時株価3万円×100株-購入時株価1万円×100株)ものリターンを得ることができます。

 

逆に、何らかの要因で株価がどんどん下がっていくような状況に入ってしまったら、株価1万円以下で売却せざるを得ない時もあります。その場合のリターンはマイナスです。

 

短期的な投機では、長期的な投資と異なり、2年目3年目といった長い目で見たチャンスがありません。そのため、リスクの幅を狭めることが比較的困難であることが分かります。

 

株価は、「企業の業績・将来性」のほか、「投資家の売買動向・投資家心理」「景気・為替といった外部要因」によって形成されます。投機家は、市場の参加者の群衆心理や駆け引きに左右されたり、影響を与えたりすることが多いと言えます。

 

投機よりも投資の方が良いか?

 

投資家と投機家は、「資本提供の目的や期間」「取っているリスク」などの違いによってある程度分類できると考えられます。しかし、一般の方にとっては、例えば新聞などを読んでいるときに投機家と投資家はひとくくりで捉えられています。

 

また、「投資家は企業の事業活動に重点的に目を向けているのに対し、投機家は株価の変動チャートに関心の大半が向けられている」とも言われています。そのため、「投資は良くて投機は悪い」というイメージが多いのが現状です。

 

しかし、投資と投機を天秤にかけて、どちらが「良い」「悪い」ということを判断することは難しいです。どちらにも「賢明な投資家」と「賢明ではない投資家」、「賢明な投機家」と「賢明ではない投機家」がいると「バリュー投資の父」と呼ばれたベンジャミン・グレアムは述べています。

 

リスクのつながり

 

賢明でない投資家や投機家の行動と結果によって、市場のみならず、社会全体として受ける損失は測りきれないものがあります。2009年に起きたリーマンショックがその一例です。

 

リーマンショックでは、アメリカの大手証券会社であるリーマンブラザースの経営破たんが発端となり、金融機関や市場が機能不全となりました。このように一つの組織の経営破たんなどの影響が他の金融機関、金融システム全体に波及するリスクを、経済用語では「システミックリスク」と言います。

 

投資家・株主は、各自が出資した金額を限度として保護されています。つまり、投資先企業が損失を出して倒産しても、投資家・株主の責任範囲は出資した金額が上限となります。しかし、市場や社会全体をみれば、実質的には出資した金額限りで終わらないケースもあるのです。

 

日本では「風が吹けばおけ屋が儲かる」という表現があります。ある事象がきっかけとなり、まわりまわって一見関係のなさそうな場所や物事にまで思わぬ影響がでることがあります。

 

前述のシステミックリスクによって、企業や一個人でさえも影響をうけます。これは、そのため、社会の一人一人が間接的なリスクを負っているということも認識したうえで、投資活動を行うことが重要になります。