企業の収益性を測る指標:ROEとROICの違い

  • 企業の収益性を測る指標:ROEとROIC

 

企業の「収益性」を見るための指標に、自己資本利益率(=ROE)と投下資本利益率(=ROIC)という指標があります。

 

まず、企業の「収益性」といった場合には、企業の儲けである「利益」を見るだけでは十分ではありません。収益性が高いと判断するには、利益が出ていることはもちろんの事、それが「効率よく」生み出されたかどうかも重要なのです。

 

「収益性」とは、利益がどのくらい出ているかを表す「売上高利益率」と投入したお金を効率よく使って稼げたか(=投入したお金の何倍稼げたか)を表す「資本回転率」の2つの観点を掛け算して求めます。

 

  • 違いは「借金」を含めるか含めないか

 

ROEとROICは、「売上高利益率」と「資本回転率」の、2つの観点を踏まえて求められた収益性を見るための指標です。ROEとROICの数値における大きな違いを一言でいうなら、「投入したお金」の範囲に「借金(=有利子負債)」を含めるか、含めないかです。

 

つまり、銀行などの借り入れなどに頼らず、株主からの出資である資本金とこれまでの利益の蓄積で経営を行っている企業(=いわゆる無借金経営)にとっては、ROEもROICもほぼ同じ数値になります。

 

ただし、この「投入したお金」の範囲については、企業によっても、会計の専門家によっても異なる場合があるという点は念頭に置いておいてください。

 

  • 計算式の比較から違いを確認する

 

以下に、ROEとROICの計算式を比較し、その違いを見ていくことにしましょう。

 

まずROEとは、「投資家・株主が出資した資本(=自己資本)を何倍にしたのか」を見るための指標です。

自己資本利益率(ROE)=当期純利益÷自己資本

ROEを計算するための、当期純利益は損益計算書から、また自己資本は貸借対照表という企業の決算書から簡単に取ってくることができます。例えば、ROEが8%の場合は、一年間で資本が1.08倍に増えたことになります。

 

一方、ROICとは、「事業のために投じたお金(投下資本)が何倍になって返ってきたか」を見るための指標です。

投下資本利益率(ROIC)=当期純利益÷投下資本

投下資本を計算するには、2つのアプローチのいずれかを使います。一つは、資産ベースのアプローチです。対象となるのは、「運転資本(売上債権+在庫-支払債権)+固定資産」です。もう一つは、負債ベースのアプローチです。対象となるのは、「有利子負債」と「株主資本(自己資本)」です。

 

負債ベースのアプローチにおける有利子負債とは、銀行からの借入や社債など、元本に加えて利息の返済が必要な資金のことを言います。一方、株主資本(自己資本)とは返済する必要のない株主・投資家からの資金です。

 

ここに、ROEとROICの違いが表れてきます。2つの収益性を測る指標の計算において、分母に借金である有利子負債を含めるか含めないかという違いです。
 

  • 経営者はROEとROICのどちらをより重視しているか?

 

なお、無借金経営を行っている企業でも、経営者の一番重視している指標としてROICを挙げている企業もあります。資産ベースのアプローチでは、「債権管理」「在庫管理」などについて継続的に分析と改善を行うことができるというメリットがあります。

 

ROEを重視している投資家はたくさんいるでしょう。一方で、企業の長期的な成長に関心の高い投資家であれば、企業がどのような指標を重視しているかという点に着目すべきです。

 

「なぜROEではなくROICなのか」、逆に「ROICではなくROEなのか」といった点にも注目して、企業の経営者の頭の中を、開示している情報から読み取る姿勢が大切です。