ROICを社内の共通言語として企業の方向性を定める意味とは

  • 求心力を高める

 

組織を一つに束ねて同じ方向に進むことは、極めて重要な経営者の役割の一つです。経営者自身の能力や魅力に加え、「適切な指標」を設定することは、求心力を高める上で非常に効果的です。

 

会社の方向性を定めるために、どのような指標を設定するかは、会社のビジョンや理念といったものが根底にながれていなければ、形だけの数字になりかねません。

 

そのため、投資家は、「なぜその指標を経営者は選択し、重視しているのか」について読み解く必要があります。単に、一般的に使われている指標だからという理由で当てはめると、投資の際の判断を見誤る可能性もあります。

 

  • 収益性

 

企業が継続していく上で、価値を創造し、利益を高めていくことが必要不可欠です。そのため、「どのくらい効率的に利益を稼いでいるか」をみる収益性の指標は、経営者にとってモニターすべき指標の一つです。。そして、「経営者が重視している指標は何か」に目をむけることが、投資家の投資判断において非常に重要となります。

 

収益性を確かめる代表的な指標には、ROIC(投下資本利益率)とROE(株主資本利益率)があります。その違いをまとめると、以下の図になります。

 

 

 

  • 「何を(What)]「なぜ(Why)」「どのように(How)」

 

例えば、ROIC(投下資本利益率)の資産ベースのアプローチを採用し、これを最も重視する経営指標の一つとして設定している企業があります。

 

まず確認すべきなのは、なぜそれが重要なのかを説明しているかどうかです。例えば、複数の異なるビジネスを展開している企業においては、「それぞれの事業のパフォーマンスを客観的に測定できる指標として有効」など、
会社が何のためにその指標を設定しているのかを把握します。

 

次に、設定した重要な指標(例えば、ROIC)について、どの程度社内で浸透しているかについて確認します。

 

重要な指標は、会社のパフォーマンスを牽引する役目を持っています。しかし、本来の役目を果たしていない指標は数多く存在します。それは、指標に関与する人たちの理解が得られていないことが最大の理由です。

 

生きた指標であるかどうかを確認するためには、「会社として重要な指標を社内に浸透させるための仕組み・取り組み」や「指標の浸透度など何らかの形で定量化しモニターしているか」などを確認することも大切です。

 

また、ROIC(投下資本利益率)の計算においては、会社によって計算の対象範囲が異なり、必ずしも他社との比較が有効な数値であるとは言えない、ともいわれています。そのうえ、財務・会計的な知識がないと理解できないという大半の人のメンタルブロックを解除する必要もあります。

 

そのため、会社として、ROICの意味を会計や財務の知識のない人にも、分かり易く説明ができているかも重要なポイントになります。会計や財務の専門用語を使うのではなく、誰もが理解できる言葉に置きかけて説明をすることは可能です。

 

ROICは、投下した資金を「効率的」に使って会社の「利益に貢献」しているかを測るための「ものさし」です。ROICの理解が浸透すると、「利益率」や「効率性」の観点が多くの人にインストールされます。

 

その結果の一つとして、例えば、製造から販売に至るまでのプロセスの中に、「ムダな工程はないか」「短縮できる工程はないか」といった点に目を向けさせることができるようになります。

 

単に目の前の作業の改善にとどまるのではなく、それが最終的な会社の収益性に貢献していることを数値として理解することで、会社全体として同じ方向を見ながら進んでいくことができるようになります。

 

企業の収益性を分析する際には、「企業として重要視している指標であるかどうか」「重視している指標がビジョンや理念として掲げている内容と矛盾していないか」「社内に浸透させるための独自の取り組みや工夫がされているか」「継続的にモニター・分析し、開示されているか」といった点にも着目することが大切です。