イノベーション(革新)の源泉:研究開発費からみる企業の将来性

研究開発とイノベーション

 

企業は社会に価値を提供し、自社の将来の収益性を確保するために、研究開発活動に投資を行っています。研究開発活動には、新しい商品や技術の開発が挙げられます。

 

研究開発活動は、「革新」「変革」と日本語で訳されるイノベーションとつなげて考えることが大切です。イノベーションとは、既存のモノや仕組みに新たな技術や考え方を組み合わせ、新しい「切り口」や「活用法」を生み出すことです。

 

イノベーションは、非常にシンプルなものの組み合わせであったり、大規模な研究開発の成果に基づくものであったりと、さまざまあります。各社の研究開発に対するスタンスや投資金額(研究開発費)は、業種やビジネスモデルによって異なります。

 

企業の財務情報にある「研究開発費」を出発点に、企業のイノベーション力について見ていくことにしましょう。

 

研究開発の会計処理

 

まず最初に、簡単に研究開発費の会計上の処理について確認します。企業の研究開発活動は、将来の収益を獲得するために行われています。また、会計上の「資産」とは、「将来的に会社に収益をもたらすことが期待される経済的価値」と定義されています。

 

しかし、この研究開発活動にかかる金額は、資産として計上されるのではなく、費用として処理されることが大半です。なぜでしょうか。

 

研究開発の段階では、「将来の収益を獲得できるかどうか」について客観的に判断することが困難です。そのため、原則的に、研究開発にかかる金額は費用として処理されます。

 

ただし、研究開発費を「研究段階」と「開発段階」に分けた場合、将来収益の獲得の確実性がます開発段階における費用については、一定の条件を満たせば資産として計上することになります。これらは、適用する会計基準によって処理が異なる場合があります。

 

研究開発活動にかかる投資額を「資産として計上するのではなく、費用として処理する」ということにはどのような影響があるでしょうか。まず一つに、「企業が将来獲得するであろう収益の源泉となる活動がどのくらい行われ、資産として蓄積されているのか」についての状況を把握することが難しくなります。

 

つまり、企業の将来性を評価することが困難となります。もう一つは、費用として処理されるという事は、当期の利益にマイナスの影響を及ぼします。ただし、国による研究開発促進税制などがあり、税制面での優遇措置を受ける場合は利益へのインパクトはプラスの影響となります。

 

なお、会計基準は国によって異なります。また、日本国内においても、適用する会計基準が会社によって違う場合があります。さらに、この研究開発にかかる投資額の処理については、資産と費用の境界線が各企業の判断に委ねられることから、他社との比較が困難な分野であり、比較をする際には注意が必要です。

 

会社の成長性を判断する指標の一つ:「売上高研究開発比率」

 

財務的な観点から、研究開発費をつかって会社の成長性を判断する指標の一つに「売上高研究開発費率」があります。これは、会社が売上高に対してどのくらいの割合で研究開発投資を行っているかを把握するものです。

 

売上高研究開発費率=研究開発費/売上高×100

 

あらゆる数値に言えることですが、「ある一時点における単独の数値」に意味を与えることは不可能です。数値に意味を与えるには、何らかの比較が必要です。

 

なぜなら、比較によってのみ、数値の本質的な意味を捉えることができ、適切な判断に役立てることができるようになるからです。比較の種類にはいくつかありますが、まずは過去数年分の売上高研究開発費率を計算し、時系列で比較をしてみます。そして、どのような数値の変化(増減)があるかをトレンド(傾向)として捉えましょう。

 

なお、財務諸表からは、研究開発費の合計額を把握することはできます。一方で、内訳や企業の戦略などについては、別途情報を取ってくる必要があります。

 

例えば、企業の開示している統合報告書では、会社の「ビジョン」「戦略」「ビジネスモデル」「パフォーマンス」について、つながりのあるストーリーとして開示されることが求められています。企業の研究開発活動について、全体的な戦略における位置づけや会社による研究開発活動の収益予測なども確認してみましょう。

 

研究開発活動は、イノベーションに繋がる企業にとって重要な活動の一つです。現時点でのパフォーマンスの良し悪しを評価するだけでなく、「イノベーションが生まれる環境であるか」「イノベーションが継続的にうまれる仕組みができているか」といったことにも目を向け、将来キャッシュフローの予測に役立ててください。