機関投資家の預かった資産への責任:スチュワードシップ責任

機関投資家とスチュワードシップ責任

 

「誰の」お金を運用するかによって、投資家は個人投資家と機関投資家に分けられます。個人投資家は、自らの資金が投資の源泉となっています。一方、機関投資家は他人のお金を集めて投資の源泉とし、運用しています。例えば、銀行や保険会社などが機関投資家になります。集めた預金や保険料が投資の源泉となります。

 

このように機関投資家は他人の資金を預かって運用しており、受託者ともいいます。一方、運用の結果として得られるリターンを最終的に受け取る顧客は受益者と呼ばれています。

 

受託者は、受益者に対して適切な運用を行い、中長期的な投資リターンの拡大を図る責任を負っています。これを、受託者責任またはスチュワードシップ責任と言います。

 

スチュワードシップ責任を果たすことが経済全体の成長にもつながるものとの考えから、2014年2月に「日本版スチュワードシップ・コード」が金融庁より公表されました。2015年6月では、日本版スチュワードシップコードの受け入れを表明した機関投資家の数は191になります。

 

「目的を持った対話」とは?

 

日本版スチュワードシップ・コードには、受益者等に対する責任を果たすための原則が7つにまとめられています。「責任ある機関投資」を目指す投資家であれば、この7つの原則を考慮し、とるべき行動について検討する必要があります。

 

この7つの原則の中でも特に重要なのは、原則4.「機関投資家は、投資先企業との建設的な『目的を持った対話』を通じて、投資先企業と認識の共有を図るとともに、問題の改善に努めるべきである」だと言えるでしょう。

 

「目的をもった対話」は積極的関与を意味するエンゲージメントや対話の英語訳であるダイアログとも呼ばれ、これらがキーワードとなります。ここでいう「目的」とは、投資先企業の長期的な企業価値向上や持続的成長を促すことを指します。そのための対話の「場」を作り、そこに参加することが重要です。

 

整理すると、機関投資家にはスチュワードシップ責任を果たす上で、2つのコミュニケーションを認識する必要があります。一つは、受益者に対する説明責任です。もう一つは、投資先企業との対話です。この両方を視野に入れて投資活動を行うことにより、三者間のリターンが長期的にマッチしていきます。

 

対話とは双方向コミュニケーションである

 

対話とは、対等な立場になって初めて成立するコミュニケーションです。投資先企業の業績について、投資家が、一方的に責めの姿勢で質問を行う決算説明会のようなものではありません。また、有識者と呼ばれる方を集めて行われるその場だけの一時的・形式的なものとも違います。

 

参加者双方が組織の持続的な成長のための意見について責任を持ち、建設的なコミュニケーションを図っていく必要があります。

 

対話を含むスチュワードシップ活動を行うために発生するコストは、投資をするうえで必要なコストです。このコスト認識を機関投資家と受益者の双方で共有することの重要性が指摘されています。

 

スチュワードシップ活動を行う上では、企業から発行されているアニュアルレポート報告書といった媒体を活用できます。

 

共通のコミュニケーションツールを使うことにより、「企業と機関投資家が互いの方向性について理解を確認する」「持続的な価値創造の観点から改善すべき点を発見する」「継続的な改善のモニターを行う」といったことが容易になります。