企業の買収によるシナジー効果は「買収後の統合(PMI)」が鍵

M&Aとは企業と企業の結婚

 

企業が、「さらなる成長」「収益性の改善」「事業の強化」などを目指すとき、「他社を買収すること」は選択肢の一つです。他社を買収することは、Merger and Acquisition(合併と買収)の略であるM&A(エムアンドエー)と呼ばれています。

 

M&Aは、A社とB社が結婚するようなものであり、「単独で経営を行うようり、一緒になる方がより高い価値を創出することができるはずだ」という前提のもと行われます。

 

M&Aによる最大の効果は、シナジーです。シナジーとは、異なる企業の文化や強みが組み合わさることによって得られる「相乗効果」を意味します。つまり、「1+1>2」となることを期待して行われる経営判断の結果です。

 

シナジーの結果、得られる効果は、「特定の顧客層の獲得(=新規市場の開拓)」「販売・流通チャネルの共有による業務効率向上」「ブランドの獲得による認知度向上」「技術の獲得による商品開発力向上」などがあげられます。

 

このシナジー効果は、売上や利益などの財務結果に最終的に結びついて初めて評価されます。M&Aは、成功すれば、大きな成果を得られる可能性がありますが、その成功確率は、「3割から5割」といわれています。成功するケースは少なく、極めてリスクが高いと言えます。

 

M&Aが成功するかどうかは、企業の価値に大きな影響を与えます。以下にM&Aに関して、投資家が見るべき重要なポイントについて見ていきましょう。

 

M&Aの成功を左右するPMIとは?

 

M&Aが成功しないのは、「M&A後の統合がうまくいかないから」という理由が大半を占めます。M&A後の統合のことを、PMI(ピーエムアイ:Post Merger Integrationの略)と言います。

 

PMIがうまくいかどうかのカギを握るのは、「人材」です。 買収する側の企業と買収される側の企業(被買収企業)においては、「企業風土」「理念・ビジョン」「評価制度」「使っている言葉」「仕事のやり方」など、多くの違いがあります。

 

違いを統合するということは、買収側の人も、被買収側の人も、M&Aによって「変化」を受け入れる必要があるということです。しかし、人の脳は、「変化に抵抗する」ように作用します。脳が「これまでのやり方を変えるということは、これまで費やしてきた時間や労力が無駄になること」と捉え、「損をした気持ち」になります。

 

この心理的作用により、人はさまざまな場面で損失を避けようとします。損失を回避することは、脳の欲求です。これが、ビジネスの場面に限らず、日常的な意思決定にも大きく影響を与えています。この心理学的作用は、「プロスペクト理論」として知られています。

 

このような心理的作用があることから、M&A後の企業間の統合は簡単ではありません。PMIにおいて重要なのは、人材マネジメントであると言えます。

 

投資家が見るべきポイント

 

投資家がM&Aを行う企業を分析する際には、企業がPMIについて「どの程度重要視しているか」「PMIの計画(内容・期間)があるか」「PMIにおける人材マネジメントの方針は立てられているか」「どのような数値を使いM&A後の効果をモニターしているか」などにも目を向けてください。

 

例えば、M&Aの成功例として挙げられる日本電産の永守会長は、買収後の基本方針として下記の3つをあげています。

 

①経営者も従業員も代えないで、一緒に経営していく。
②買収する会社のブランドを残し、安心感を与える。
③買収当初は数人支援を出すが、再建が終わったら基本的には全員引き上げる。

 

このようなPMIに関する基本方針の有無により、経営者がどの程度PMIを重視しているかが分かります。この情報は、M&Aの成功確率を予測する際に役立ちます。

 

M&Aは、「結婚」と同じです。結婚をすること自体がゴールではないのと同じで、M&Aもそれ自体がゴールではありません。

 

買収前にお互いの「相性」があうかどうかを見決めることも大切ですが、最も重要なのは、M&A後のPMIです。

 

PMIに関係する情報は、財務情報だけを分析していても見えてきません。「買収企業と被買収企業の双方が、互いの違いをどうすり合わせて、長期にわたり価値を生み出していけるか」が、投資家の企業価値の分析と評価におけるポイントとなります。