- 経済的企業価値
企業の価値を経済的な観点から測定する方法はいくつかあります。中でも最もポピュラーな方法が、「ディスカウンテッド・キャッシュフロー法(DCF法)」とよばれるものです。
DCF法では、「企業の将来にわたりフリーキャッシュフローを継続的に生み出していける能力」を算出した結果を企業価値と捉えています。DCF法による企業価値の定義とは、「将来キャッシュフローを現在価値に割り引いた額の総和」とされています。
それでは、「将来キャッシュフロー」の「将来」とは、どのくらいの期間をさすのでしょうか。
企業は継続することを前提に、ビジネスが行われています。そのため、将来キャッシュフローも永続的に発生すると仮定します。
まず、一般的な予測可能期間である、3年から5年の将来キャッシュフローを見積もります。そして、予測する最終年度以降(予測可能期間が3年であれば、4年目以降/予測可能期間が5年であれば、6年目以降)のキャッシュについては「残存価値(ターミナル・バリュー)」としてまとめて計算します。
DCF法における残存価値(ターミナル・バリュー)は、経済的企業価値の大半を占めるため、重要度の高い項目です。
今回は、この「残存価値(ターミナル・バリュー)」の計算方法について、2段階に分けて見ていくことにしましょう。(「現在価値」および「割引率」の概念を理解していることを前提に話を進めていきます。)
- ステップ1:「残存価値(ターミナル・バリュー)」を求める
残存価値(ターミナルバリュー)は、以下の計算式より求めることができます。
残存価値(ターミナル・バリュー) = 予測最終年度の次年度のキャッシュフロー/割引率(r) |
例えば、下記のような条件では、残存価値(ターミナル・バリュー)は、1800億円となります。
予測可能期間:3年
1年度キャッシュフロー:100億円
2年度キャッシュフロー:120億円
3年度キャッシュフロー:144億円
予測最終年度の次年度のキャッシュフロー=3年度のキャッシュフロー=144
割引率(r):8%
残存価値(ターミナル・バリュー)=144/0.08=1800億円
これをグラフ化したものが、下図となります。

- ステップ2:「残存価値(ターミナル・バリュー)を現在価値に割り引く
各年度の将来キャッシュフローおよび残存価値(ターミナル・バリュー)が計算できました。経済的企業価値を出すには、これらの金額を単純に足してはいけません。現在の価値に割り引く必要があります。
割引率は、この例では8%でした。それぞれのキャッシュフローを現在価値に割り引くための計算式は、以下の通りです。
1年後キャッシュフローの現在価値=100÷(1.08)=93億円
2年後キャッシュフローの現在価値=120÷(1.08)²=102億円
3年後キャッシュフローの現在価値=144÷(1.08)³=114億円
残存価値(ターミナルバリュー)の現在価値=1800÷(1.08)4=1,323億円
上記 をグラフ化したものが、下図となります。視覚で、経済的企業価値に占める残存価値の割合を確かめましょう。

以上のように、最終的な経済的企業価値を求める際には、1)「残存価値(ターミナルバリュー)」をまず求めて、2)さらに現在価値に割り引くという2つのステップが必要となります。「企業は継続する」という前提があることを理解し、経済的企業価値を求める際に必要な残存価値(ターミナルバリュー)を算出してみてください。