様々な資本の種類

国際統合報告フレームワーク(以下、「フレームワーク」)では、例示的に「財務資本」「製造資本」「知的資本」「人的資本」「社会・関係資本」「自然資本」の6つの資本が挙げられています。

これらの分類はあくまでサンプルです。すべての企業にこの資本の分類が当てはまるわけではない点や、この分類ごとの資本の開示が求められているわけではない点に注意が必要です。

資本の種類 内容
財務資本 資金のプール
  • 資金
製造資本 製品の生産又はサービス提供に当たって組織が利用できる製造物
  • 建物
  • 設備
  • インフラ
知的資本 組織的な、知識ベースの無形資産
  • 特許、著作権、ソフトウェア、権利及びライセンスなどの知的財産権? 暗黙知、システム、手順及びプロトコルなどの「組織資本」
人的資本 人々の能力、経験及びイノベーションへの意欲
  • 組織ガバナンス・フレームワーク、リスク管理アプローチ及び倫理的価値への同調と支持?
  • 組織の戦略を理解し、開発し、実践する能力?
  • プロセス、商品及びサービスを改善するために必要なロイヤリティ及び意欲であり、先導し、管理し、協調するための能力を含む。
社会・関係資本 個々のコミュニティ、ステークホルダー・グループ、その他のネットワーク間又はそれら内部の機関や関係、及び個別的・集合的幸福を高めるために情報を共有する能力。社会・関係資本には次を含む。
  • 共有された規範、共通の価値や行動?
  • 主要なステークホルダーとの関係性、及び組織が外部のステークホルダーとともに構築し、保持に努める信頼及び対話の意思?
  •  組織が構築したブランド及び評判に関連する無形資産?
  • 組織が事業を営むことについての社会的許諾(ソーシャル・ライセンス)
自然資本 組織の過去、現在、将来の成功の基礎となる物・サービスを提供する全ての再生可能及び再生不可能な環境資源及びプロセス。自然資本には次を含む。
  • 空気、水、土地、鉱物及び森林
  • 生物多様性、生態系の健全性

ここで重要なのは、上記のような組織の内外にある様々な資本の「組み合わせ」です。例えば、ルービックキューブの6面を上記の6つの資本と捉えてみてください。ルービックキューブでは、6面をそろえることが一つのゴールです。一方、統合報告では6つのカテゴリごとに資本を分けて開示する事がゴールではありません。

統合報告では、6面をそろえるのではなく、様々な資本がどのように組み合わされているかを明らかにすることが重要となってきます。

ルービックキューブの6面の組み合わせは、43,252,003,274,489,856,000通りもあるそうです。組織における資本の組み合わせも、組織の数だけ異なるパターンが存在します。その異なるパターンを開示することが、組織の独自性を効果的に開示することに繋がります。