複雑に見えるビジネスモデルをシンプルに考える

  • 企業の目的と達成するための手段

 

企業の目的は、「利益の追求」ではなく、「価値の創造」です。価値を創造するためには、どこにどのくらいの資本(カネ)や資源(ヒト・モノ)を配分するかという「戦略」があり、その戦略を実行するための仕組み(システム)である「ビジネスモデル」が必要です。

 

車での旅で例えるなら、経営者はドライバーであり、「目的地」「乗車人員数」「ガソリンの種類・量」などを決定(=戦略)し、目的地へたどり着くための手段として車(=ビジネスモデル)を使います。

 

戦略があっても、ビジネスモデルが無ければ目的を達成することは不可能です。逆も同じで、ビジネスモデルがあっても、戦略がなければ一歩も前へ進むことはできません。

 

これまでは、企業の目的が「利益の追求」と捉えられ、過去の実績をあらわす財務情報を中心に確認されてきました。

 

しかし、これからの企業は、「価値の創造」という目的で「過去から現在に至るまでに達成されてきたか」「現在から将来にわたり達成し続けていくか」について、投資家をはじめとする外部ステークホルダーに報告する必要があります。

 

企業は、戦略だけでなく、ビジネスモデルを開示することで、「将来にどのような価値を創造する能力があるか」を示すことができるようになります。このためには統合報告書を作成し、投資家をはじめとする外部ステークホルダーに効果的に自社のビジネスモデルを説明することが大切です。

 

  • ビジネスモデル

 

まず、統合報告書とは、企業の「長期の価値創造」について、「一つのつながりのあるストーリー」として分かりやすく伝達するための媒体です。現在、多くの企業のホームページ等で公開されている情報です。ビジネスモデルは、統合報告書の中で記載されることが望ましい項目の1つです。

 

他にも、「組織概要と外部環境」「ガバナンス」「リスクと機会」「戦略と資源配分」「 実績」「将来見通し」などの開示を行うことによって、企業の全体像を浮き彫りにします。これらの内容の詳細については、「国際統合報告フレームワーク」を入手して確認することができます。

 

国際統合報告フレームワークにおけるビジネスモデルは、「組織の戦略目的を達成し、短、中、長期に価値を創造することを目的とした、事業活動を通じて、インプットをアウトプット及びアウトカムに変換するシステム」と定義されています。

 

もっとシンプルに理解するために、先に挙げた車の旅を思い出してください。旅の目的地へ行くための手段である「車種」が、ビジネスモデルに該当します。経営者は目的に応じて、「車種=ビジネスモデル」を選択します。車のバリエーションは数えきれないくらいある一方で、車種はある程度限られています。

 

例えば、「ハイブリッド」「コンパクト」「ミニバン」「セダン」「SUV」「スポーツ」「ワゴン」「セダン」「ミニバン」など大手自動車メーカーで挙げられている車種は10種類前後です。

 

ビジネスモデルもまた、「物販モデル」「広告モデル」「マッチングモデル」「継続課金モデル」「消耗品モデル」「ライセンスモデル」などを含む約10種類前後のモデルに類型化することができます。

 

  • シンプルに考える

 

ビジネスがグローバル化する中で「複雑になった」と感じたり、多くの事業を展開している企業においては、「なにが全社的なビジネスモデルなのかわからない」といった声もあります。しかし、ビジネスモデル自体はシンプルであることをまずは認識する必要があります。

 

ビジネスモデルとは、いくつかのシンプルなモデルの組み合わせによって複雑にみえることがあります。例えば、みなさんも以下のような鳥(雁)の群れを、TVや写真などでみたことがあるでしょう。

 

 

これは、実はシンプルな以下の雁字飛行(V字型の飛行)がいくつも組み合わさった形なのです。

 

雁字がいくつも組み合わさって複雑に見えることから、「雁字搦め(がんじがらめ)」(束縛を受けて身動きが取れないさま)という言葉が生まれたとも言います。

 

ビジネスモデルを複雑に捉えて、思考が雁字搦めにならないよう、分解してシンプルに理解するよう社内で整理することが統合報告書を作成する上で非常に重要となります。