「額」と「率」:分析の目的を明確にして使い分ける

  • 日常に潜む「額」や「率」の甘い罠

 

あなたは買い物が好きでしょうか?セールの文字につられて、必要のないものをつい買ってしまった、という経験があるのではないでしょうか。

 

「安く買えてありがたい」と思うかもしれません。しかし、多くの場合、企業の広告宣伝により「買えば得をする」「買わなければ損をする」という気持ちになり、人は自らが「買いたい」と錯覚してしまう場合があります。

 

広告宣伝は人の心理をうまく使い、言葉巧みに人の購買意欲を高めます。このときは数値を活用することで、人の心理に作用します。例えば、「1万円オフ」「50%オフ」など、「額」や「率」の甘い罠に、いとも簡単にかかってしまうのです。

 

そして、同じ2万円の商品でも「一万円オフ」だと買わないけど、「50%オフ」だったら買ってしまうといったように、一万円という「額」を50%オフという「率」に変えるだけで行動に違いが生じることもあります。

 

  • 企業を分析する際にも適切な指標を選択できているか

 

企業を分析する際にも、売上高、原価、利益といった「額」や営業利益率や株主資本利益率といった「率」が多く登場します。

 

適切に企業を評価する際には、これら「額」や「率」をどのように使い分ければよいのでしょうか。いくつかの定量化のパターンを確認してみましょう。

 

1)絶対額

 

これは単純に合計した額であり、最も簡単な方法です。例えば、「売上高」や「利益」などです。売上高や利益の絶対額の時系列比較により、「成長性」や「収益性」を実際の規模として確認することができます。

 

注意しておきたいのは、時間の経過とともに絶対額の対象範囲が変わってくる場合です。例えば、他社を買収などして売上の規模が拡大した場合、売上の絶対額だけを比較すると数値を見誤る可能性があります。

 

2)パーセンテージ(%)

 

パーセンテージとは、ある特定の項目が全体(母集団)の中でどのくらいを占めるのかを表したものです。特定の項目を数え、全体のサイズで割り、100を掛けることによって計算することができます。つまり、全体を一律に100と捉え直して、その割合を見るためのものです。

 

例えば、「満足した顧客の割合」「職場における事故で負傷した人数の割合」などが挙げられます。これはターゲットとなる数値があり、それに対してどの程度達成されたかを把握する場合などに有効なケースです。

 

しかし、パーセンテージは、白か黒かといった両極端の結果をベースにしています。顧客は「満足したか」「しなかったか」でカウントされ、顧客が「どのくらい」満足したかまでは測定することはできません。

 

3)比率・割合

 

これは、同じ母集団のある合計値(分子)を、別の合計値(分母)で割って求めます。例えば、「一件あたりの売上高=売上高÷請求件数」「1人当たり売上高=売上高÷従業員数」などです。分子は生産したもの(=アウトプット)であり、分母は投入したもの(=インプット)となります。これは、生産性をみる際にとても良い方法です。

 

以上のように、数値を分析する際には、「その数値によってどのような情報を得たいか」といった分析の目的をまずは明確にします。その上で、適切な数値の形式(絶対額、パーセンテージ、比率・割合など)を選択する必要があります。

 

また、どれか一つを必ず選択する必要性はなく、組み合わせて使うことによって、より正確な判断材料として活用することもできます。