適切な戦略選択のため、目的と目標の違いを理解し指標を設定する

組織であれ、個人であれ、何か改善したいと考えることに対して、定量化(数値化)して管理すれば、改善度を把握することができよりよいパフォーマンスにつなげることができます。

 

例えば、「ダイエットをして痩せたい」と思えば、体重を測定し、改善度をチェックしたりします。しかし、ダイエットにおける体重とは違い、ビジネスでは改善したいことに対してなんらかの定量化を行うことは非常に難しいのが現実ではないでしょうか。

 

定量化を困難にさせている一つの要因に、目的と目標の違いを明確に認識していないことが挙げられるでしょう。今回は、目的と目標の違いについて見ていくことにします。

 

目的と目標の違い

 

上司や同僚、部下の方との会話で「それは目標であって、目的じゃない!」なんて思うことはありませんか?

 

「目的」とは目指す姿であり、「目標」とは目的を達成するためのステップです。もしくは、前者は最終的な「到達点」、後者はその過程における「通過点」と言い換えることもできます。

 

ビジネスにおいてパフォーマンスを改善するために何らかの定量化を行う際には、「目的に到達したかどうかが分かる有力な証拠」をまず言語化する必要があります。

 

例えば、Aさんが「英語力を伸ばしたい」と考えるとしましょう。この場合の理由を突き詰めると、「国際的なビジネスの場で、自分の意見が伝わるように英語を自由に使いこなす」「海外の友人を増やし、問題なくコミュニケーションをとる」といったような目的があるからではないでしょうか。

 

しかし、多くの場合、目的を明確にしないまま、最も手軽に測定ができるものを選択してしまします。例えば、「英語力を伸ばしたい」と思えば、英語の能力を測るためのテストであるTOEICで「800点を目指す」といったように、指標を設定する人が多いのが現状です。

 

実は、上記に挙げた目的に照らせば、「TOEIC800点」は一つの行動目標とはなっても、目的が達成されたかどうかまでは把握できません。TOEIC800点を取得しても、先に挙げた目的(国際的な場で英語を使いこなすなど)が達成されたかどうかの根拠にはならないからです。

 

TOEIC800点を取得すること自体が目的化されると、英語力を伸ばすことよりも、いかに点数を稼ぐかという点取りゲームに夢中になり、そのための戦略を選択しがちです。つまり、不適切な指標を選択することによって、間違った戦略を選択してしまうリスクが生じます。

 

目的地に到着したかを五感で表す

 

目的を明確にする、つまり「目的地に到達したことが明らかだと言える有力な証拠は何か」を明らかにするにはどのようなプロセスが必要でしょうか。

 

まず、まだ到着していない目的地に到着したと仮定して、そこで見える景色は何か、聞こえる音や声は何か、どのような身体的感覚があるのかを味わってみてください。

 

Aさんの目的が先に挙げた「国際的なビジネスの場で、自分の意見が伝わるように英語を自由に使いこなす」だとしましょう。

 

Aさんは、もしかしたら海外にいるかもしれません。また、会議室では、日本人以外の外国人が圧倒的に多く、会議前に英語でカジュアルに談笑しているシーンも見えるでしょう。いよいよ会議がスタートし、会議で発言した人の意見にほかの人が賛同したり、追加でコメントをされたり、反対されることもあるでしょう。

 

それらの意見の数は、Aさんの意見が英語で正しく伝達できているという一つの有力な証拠になり得ると思いませんか?

 

このように、目的を明確にするには、「五感」で感じて言語化することが有効なプロセスです。

 

逆にTOEIC800点を取った時には、どのような状況が目に浮かびますか? まず郵便ポストに入っている事務局からの封筒を開封後、点数を確認するでしょう。もしくは、ネットの画面で確認しているかもしれません。TOEIC800点を取る事が目的であれば、それ以上の証拠はないですし、必要もありません。

 

そこでようやく「800点を取ったのはいいけど、本来の目的は何だったのか?」と自身に問う人もいれば、そのまま目的のない目標を掲げ、新たに900点を目指す人もいるかもしれません。

 

なるべく早い段階で目的を明確にすることで、とるべきアクションが明確になります。何にどのくらいの時間や資金を配分するかといった「道筋」が見えてきます。適切な指標を設定することによって、正しい戦略を選択していきましょう。