企業が開示している数値データからシグナルとノイズを見分ける

あなたは、日々メールの量が多すぎて、処理しきれないといったことはありませんか?その多すぎるメールの中には、重要なものと、重要でないものが混在しているはずです。

 

同じように、企業から発信されている情報の量は膨大です。企業は、売上や利益といった財務的な情報の他、さまざまな数値データを発信しています。数値データの中には、重要で見過ごしてはならない「シグナル」と、特別な意味を持たない「ノイズ(=雑音)」が混在しています。

 

数値データを扱う際には、重要なパフォーマンスの変化であるシグナルを簡単に素早くみつける必要があります。そのために、まずノイズを排除する必要があります。

 

例えば、長距離の飛行機で映画や音楽を備え付けのヘッドフォンを使うと、飛行機のエンジン音のノイズ(=雑音)で、空の旅がストレスに代わることはありませんか?海外出張の多い方などは、このノイズのみを消してくれるノイズキャンセリング機能のついたイヤフォンなどが役に立ちます。

 

ノイズを消さないと、重要なセリフを聞き取ることも、音楽を楽しむこともできなくなります。企業が開示しているデータも同じように、まずはノイズを排除することが重要になります。

 

そして、ノイズを排除したあとは、データから発せられる重要なシグナルに気づきやすくなります。ここでは、主要な3つのシグナルのパターンについて見ていくことにしましょう。

 

3つのシグナルのパターン

 

シグナルのパターンには、「アウトライヤー」「ロング・ラン」「ショート・ラン」の3つがあります。ノイズを排除し、シグナルを見つけやすくするグラフに、XmRチャートがあります。XmRチャートには、以下3つの特徴があります。

 

・時系列の変化を把握することができる。
・平均線があることにより、シグナルが存在するかどうかを把握することができる。
・統計的手法によって計算された自然変動上限値の設定により、数値の変動が通常の変動幅の範囲であるかどうかを把握することができる。

 

 

シグナル1:アウトライヤー

 

1つ目のシグナルは、「アウトライヤー(Outlier)」です。通常の変動幅として設けた上限値および下限値の範囲から外れる数値(異常値)のことです。通常の変動ではない場合に現れ、別に問題が起こっていることのシグナルになります。

 

アウトライヤーはシグナルですが、一度限りのものです。そのため、過度に反応する必要はありません。まずは要因を特定することが必要です。しかし、その解決策に多くの時間を費やすことは時間やお金の無駄になる可能性があります。
 
シグナル2:ロング・ラン

 

2つ目のシグナルは、「ロング・ラン(Long-run)」です。ロング・ランは、パフォーマンスのレベルが変化したことを表します。

 

ロング・ランを見つけるためには、XmRチャートの上側(中央線と上限値の間)、もしくは下側(中央線と下限値の間)のいずれか同じ側に、数値が7つ連続して現れていることを確認する必要があります。

 

ロング・ランを見つけたら、要因を特定します。パフォーマンスのレベルが変化した場合は、パフォーマンスが改善されたか、悪化したかのいずれかです。いずれの場合も、何らかの対応を取る前に、その要因を確認する必要があります。
 
シグナル3:ショート・ラン

 

3つ目は、「ショート・ラン(Short-Run)」です。XmRチャートの上限値もしくは下限値のどちらか一方に限りなく近い数値が、4回の内3回現れている場合は、大きなシグナルとみていいでしょう。この場合も、2つ目のシグナルと同様、対応をとる前に要因の特定を行うことが重要となります。

 

XmRチャートは、作り方も簡単であり、シグナルの見分け方も上記の通り容易にできるため、シンプルで使い勝手のよいツールです。

 

企業が発信している情報のなかには、たくさんの数値データが含まれています。しかし、データの中からノイズを排除できるようにグラフ化している例はほとんどありません。XmRチャートを活用して、より効果的な情報開示に役立てましょう。