KPI設定プロジェクトを進める上で重要な「当事者意識」と「場」

▼たった一人の人の熱意が会社を変える

 

企業の重要なパフォーマンス指標であるKPI(Key Performance Indicators)の設定・運用、また、開示のグローバルなトレンドとして近年普及し始めている「統合報告」に携わる中で気づくことがあります。大きな組織の新しい取り組みの始まりは、たった一人の方の強い熱意にあるということです。

 

そのような方々に共通して感じられるのが、その方々の所属している組織を超えて日本を変えていこうとされる使命感です。徐々にその思いが周囲に伝わり「やらされ感」ではなく「面白い。やってみたい。」という方も増えていきます。

 

人が他の人の熱意や考え方に共感し、共鳴することで初めて本当の当事者意識というものが芽生えてくるのだと思います。そういう方の輪が広がって、小さなチームでも大きな組織を変えていく起点になっていきます。

 

今回は、社内でKPIを設定するプロジェクトを進める際のポイントについて見ていくことにしましょう。

 

▼誰が(who)、何を(what)、どのように(how)?

 

まず誰がKPIを作るのかについて議論します。他者(他社)の経験や専門家の意見からも恩恵を受けることはできますが、最終的なKPIは、その仕事に携わる人が作り出して初めて意味のある重要なものとなります。

 

何を測定するかについては、組織の根源的な目的、ありたい将来の姿について徹底的に議論する必要があります。その中で「最も重要なことは何か」が明確になることによって、必要なKPIが浮かび上がってきます。

 

(残念ながら、組織の根源的な目的について十分な議論を経ずに設定したKPIによって、KPIがその組織の重要なことを特定してしまうという逆転現象が起こっているケースもあります。)

 

測定の方法については、すでに数多くの手法が存在しています。それらの手法が確立された時代的背景も考慮しながら、それらの手法が組織の根源的な目的達成にむけて適切かどうかを包括的に検討します。

 

▼どこで?(Where)~「場」~

 

どのような「場」で社内ダイアログを開催するかは、社内コンセンサスを得たり、当事者意識を高めたりする上で重要な要素です。

 

2007年に南仏で開催されたThe Knowledge Forumへ参加する機会がありました。そこで驚いたことは外国人が日本語の「場」をそのまま「BA」という語として使い、会話していたこと。

 

日本発の「場(BA)」というコンセプトは、各参加者が安心して個人のナレッジを共有し、融合する時間と空間を意味します。知識経営の生みの親である野中郁次郎先生も、「場づくり」の重要性について言及されています。

 

似たようなコンセプトに、「ワールド・カフェ」もあります。ワールド・カフェとは、機能的な会議室で内部の人だけで議論するのではなく、外部の人も招いて、まるでカフェのようなリラックスした空間でオープンに会話をします。それにより、創造性や主体性を高め、知識や知恵が創発されます。

 

KPIをデザインする上では、未来のありたい姿を描くことが出発点です。そしてこれが最も重要なプロセスとなります。日本人が大切にしてきた「場」のコンセプトも活用し、参加者一人一人が楽しみながらやっていくことが重要です。