重要なパフォーマンス指標(KPI)の設定には「質問力」を使う

企業は、企業の外の人に企業を知ってもらうための情報発信をさまざまな媒体を通して行っています。その媒体の一つには、企業の過去・現在・未来の価値創造ストーリーを示すことを目的とする「統合報告書」があります。

 

企業の価値創造ストーリーを伝達する際には、それが単に絵に描いた餅にならないために、主要なパフォーマンスを数値で表したKPI(Key Performance Indicators)などの数値情報と合わせて将来の価値創造の実現可能性を高める工夫がされることが多いです。

 

しかし、KPIを設定する際のスターティングポイントを間違うと、適切なKPIではないため、効果的に外部に開示することが難しくなります。

 

適切なKPIを設定するためには、「何をすべきか」ではなく、「どうありたいか」を起点に考える必要があります。ここでは、「何をすべきか」を「To Do List」、「どうありたいか」を「To Be List」として捉え、見ていくことにします。

 

To Do ListとTo Be Listの違いとは?

 

To Do Listは、業務をもれなく把握したり、業務の優先順位付けをするのに効果的です。つまり、何をいつまでに終わらせるかといったプロジェクトの管理(プロジェクト・マネジメント)に適したツールです。

 

しかし、To Do Listは、どうしても一週間、一か月、一年といった短期的な物事が優先的になってしまいます。さらには、思考自体も短期的になってしまう恐れがあります。

 

一方、To Be Listは、将来のありたい姿を起点に描きます。そのため、To Be Listとは視点の「高さ」と時間軸の「長さ」の点においてTo Do Listと異なります。

 

To Be Listを作成すると、将来からみた今という「過去」を客観視できるため、将来の方向性を明らかにすることができます。To Do Listを作成する際には、まず、To Be Listを作成することが重要となります。
 
「質問力」を活用する

 

To Be Listを作成するということは、将来の姿を想像するイマジネーション力が必要となります。子供たちと比較すると、大人はイマジネーションが低いといわれます。その理由の一つは、凝り固まった固定概念です。この固定概念を解除する役割を果たすのは、「質問力」です。

 

Googleの元CEOであるEric Schmidtも「会社は答えによってではなく、質問によって運営している(“We run the company by questions, not by answers.”) 」(2006年)と言っています。

 

人の脳は、質問を設定することによって、答えを探しにいくメカニズムを備えています。質問がトリガー(きっかけ)となり、より適切な答えに辿りつける可能性が高まると言われています。

 

しかし、日本の教育においては、テストの点数を取ること、つまり、すでに答えの決まっている「模範解答」を獲得することに評価の重点が置かれてきました。そこには、イマジネーション力は求められません。

 

このような、イマジネーション力を使わない教育を、長年にわたって受けてし凝り固まっているでしょう。そのような大人の脳に、イマジネーション力せる「質問力」とはどのようなものでしょうか?

 

Key Performance Question(KPQ)のポイント

 

未来を創造するための「質問力」を引き出すツールがKPQ(Key Performance Question)です。KPQは適切なKPIを設定するのに役立ちます。

 

KPQを作る上での4つのポイントをご紹介します。

 

1)オープン・クエスチョンである
2)「現在」および「将来」にフォーカスを置く
3)短く明瞭である
4)運用する過程で洗練していく

 

クローズドクエスチョンの答えはYesかNoかに絞られる質問です。一方、オープンクエスチョンは答える内容に制約を設けないタイプの質問であり、能動的に考え反応することができます。

 

また、「現在」および「将来」にフォーカスを置くことで、将来に向けた「行動」に対する対話が開かれるようになります。そして、質問文を短く、一義的で明白なものにすることで、どのようなデータを入手すればよいかが明らかになります。さらに、KPIを運用する中でKPQを洗練させていけば、より焦点が改善されていきます。

 

KPQを設定することは、適切なKPIを見つけるための入り口です。企業が情報を開示する際には、企業の価値創造ストーリーと適切なKPIを合わせることが効果的です。

 

まずは、会社のKPIがTo Be Listになっているか、なっていない場合は、質問力であるKPQを活用して、適切なKPIの設定に役立ててください。