企業は、事業を継続していくために、売上や利益といった財務パフォーマンスや、顧客満足度や従業員満足度といった財務以外のパフォーマンスも高める必要があります。
しかし、経営者が企業のパフォーマンスの全てを把握し、モニターすることは不可能です。そのため、企業が持続的に事業を行い、価値を創造していく上で、最も影響があり重要なパフォーマンスを厳選する必要があります。
経営において最も重要なパフォーマンス指標は、KPI(「ケーピーアイ」、Key Performance Indicatorsの略)と呼ばれています。
Keyとは「鍵」、経営にとって最も重要で影響があることを意味します。しかし、実際に企業がKPIと呼んでいるものの中には、特に重要とは思えないような定量化された情報が含まれているケースが多く見受けられます。つまり、何が重要なのか(=Key)が全く分からない状況となっています。
なぜそのような状況が起きてしまうのでしょうか?
「最も重要なこと(=Key)」ではないKPIを選択してしまう2つの理由
まず、企業にとって「最も重要なこと(=Key)」ではないKPIを選択してしまう理由の一つは、一般的に広く使われている指標や同業他社が採用している指標を、安易に自社に採用してしまうという長年の「習慣」が挙げられるでしょう。
それらの指標は、企業の外からやってきた指標です。それは、企業にとっての「最も重要なこと(=Key)」ではなく、他社にとって「最も重要なこと(=Key)」なのです。
企業が達成したい世界や創造したい「価値」は、企業ごとに異なります。他社軸(または他者軸)で設定されている価値は、自社の達成したい世界や創造したい価値との「つながり」はありません。それにもかかわらず、他社と同じKPIを設定してモニターしても、意味が無いことは明白でしょう。
また、企業のKPIが必ずしも「最も重要なこと(=Key)」に絞り切れていない理由の2つ目には、社内で管理しているKPIの数が過去からの蓄積により膨大になっていることが挙げられます。「最も重要なこと(=Key)」に対して数値化されたパフォーマンス指標であるKPIも、その数が多ければ、何一つ重要でなくなります。
「最も重要なこと(=Key)」に絞るには
まず、「安易に一般的なKPIを採用してしまう」ことを避けるために、KPIを設定する際に自社が実現したい世界を明確にする必要があります。そのためには、経営者の頭の中にある「将来実現したい世界」を言語化する必要があります。
「将来実現したい世界」を言葉で表現することなしに、「最も重要なこと(=Key)」となるパフォーマンスが何であるかを特定することは困難だからです。
また、KPIの数が増え続けてしまうという問題点については、「簡潔に管理する」ことが重要であることをす。「最も重要なこと(=Key)」は、少ないからこそ価値があり効果があります。
ただし、「簡潔に管理する」ことは、単にKPIの数を減らすということではありません。それぞれのKPIがどのように企業の目的と関連しているのかの「つながり」を確保することがとても重要になります。
例えば、どんどん増え続ける服の量だけを減らしてもクローゼットが片付かない状況を想像してみてください。この場合の「最も重要なこと(=Key)」も、人によって異なります。「今のサイズにあったもの」「肌によいもの」など、自分なりの判断基準が明確でなければ、不必要に洋服が増えていきます。
同じ様に、他社軸ではなく、自社の価値観や判断基準となる「最も重要なこと(=Key)」を明確に持っておくことが重要です。
以上のように、企業の重要なパフォーマンス指標であるKPIの「最も重要なこと(=Key)」を選択するためには、企業の「ありたい姿」を明確にして、不要なKPIの数を減らすことが重要となります。
レオナルド・ダビンチの名言「簡潔さは究極の洗練である」の通り、KPIも「簡潔に管理する」にすることで、試行錯誤を繰り返しながら、洗練されたものになるでしょう。何が自社にとって「最も重要なこと(=Key)」であるかという観点から、KPIが本当に自社にとってのKPIであるかどうかのチェックを行ってみてください。