組織が長期の価値創造を行う際、組織内外の様々なリソースを組み合わせて価値を生み出していくことになります。国際統合報告フレームワーク(以下、「フレームワーク」)では、様々なリソースのことを「資本」と呼んでいます。
フレームワークにおける「資本」の概念は、従来型の「資本」の概念とは少し異なりますので、まず初めにその違いについて簡単にみていきましょう。
従来型の「資本」の考え方が、上図の「会計上の考え方」です。 企業活動に必要な資金の源泉、および企業が過年度に獲得した利益の内、処分されずに留保されてきた留保利益のことを言います。 一方、フレームワークにおける「資本」の概念は、単に資金の源泉・蓄積ではなく、従来型の資本の概念よりもより広く包括的に捉えた価値の源泉・蓄積であるという違いがあります。
フレームワークの開発過程においてコンサルテーション(意見募集)を行った際には、「従来型の資本概念が十分に浸透している中で、同じ「資本」という言葉を使ってより包括的な意味を持たせたことに対して、混乱が生じるのではないか」との理由から反対意見もありました。
従来型の資本主義から脱却し、長期の価値創造を目指すことは、統合報告の一つの目的です。個人的な意見になりますが、あえて「資本」という言葉をフレームワークに含めたのは、ある種これまでの資本主義に対する挑戦でもあると考えています。