借方と貸方の位置を混乱してしまう人は「目の動き」を意識する

  • 「借方(かりかた)」「貸方(かしかた)」

 

会計の基本的な知識は、ビジネスを行う人も、ビジネスに投資する人も、必要不可欠なビジネススキルの一つです。

 

会計を学び始めるにあたり、最初につまずくポイントは、借方(かりかた)と貸方(かしかた)の違いに混乱するというものです。これは、「お金の流れの向き」に着目すれば、簡単に理解することができます。

 

企業の取引を記録した「決算書」の一つに、「貸借対照表」があります。これは、企業の財政状態を把握することを目的として作成されています。つまり、「いくらのお金を誰から調達したか」「調達したお金をどのように使っているか」を理解することができます。

 

貸借対照表の基礎の基礎ともいえる「型」は、以下の通りです。

 

 

上図からもわかる通り、左側が「借方(かりかた)」、右側が「貸方(かしかた)」です。

 

  • 目を意識的に動かす

 

日本人が文章を読むとき、目を「左から右」もしくは「上から下」へ動かして読みます。貸借対照表という言葉は、「貸(かし)」の次に「借(かり)」が来るのに対して、実際の貸借対照表上の表示は、「借(かり)」が左側で、「貸(かし)」が右側にあります。このことも、「貸方」と「借方」の位置を混乱させてしまう理由かもしれません。

 

そこで、お金がどのように会社に入ってくるのか、その流れの矢印を可視化して覚えておくことで、どちらがどちらにあったか混乱するのを避けていきましょう。

 

まずは、上図を会社の取引の「間取り図」として捉えてみてください。全く同じ大きさの二つの部屋が隣り併せに並んでいます。

 

  • お金の入り口

 

まず、お金は右側の「貸方」の部屋に入ってきます。どのように入ってくるのかというと、大きく2通りあります。

 

 

一つは、銀行からの「融資」(①)です。これは、利息と共に元本の返済義務のあるお金です。もう一つは投資家からの「出資」(②)です。これは、会社にとって返済義務の必要はありませんが、配当金を支払うなど会社に儲けが出たときに何らかの形で還元する必要のあるお金です。

 

これらのお金は、貸借対照表の右側である「貸方」にまず記録されます。投資家からの出資は返済義務はありません。しかし、昔は企業の資金調達の手段が銀行からの融資がメインだったこともあり、企業に「貸している人」という意味で「貸方」とされています。

 

  • お金の出口

 

調達したお金は、真ん中のある壁にある扉を抜けて、左側の「借方」の部屋に移動します。そして、借りている側である企業が、ビジネスに必要な材料や設備の購入など形を変えて運用していきます。

 

 

 

貸借対照表の「貸方」と「借方」の位置に混乱してしまう人は、「お金を貸してくれる人」は誰かを思い出し、お金の入ってくる矢印の向きの順番通りに覚えましょう。

 

会社のお金は、右から入って左へ流れていきます。会計上の数値を読むときは、文章を読むときの目の動きと逆になることを意識しましょう。