資金の出入り口:会社のお金は「右」から入り「左」へ出ていく

  • お金の入り口は3つ

 

「ヒト・モノ・カネ」、これらはビジネスを行う上で必要不可欠な要素です。これらどれ一つかけてもビジネスは成り立ちません。中でも「カネ」は「ヒト」を雇い、「モノ」を仕入れる為に最初に必要なため、最も優先順位の高い項目と言えます。

 

お金は、大きく3つの経路を通って会社に入ってきます。各経路には、それぞれ「負債」「資本」「収益」という名前が付けられています。

 

まず1つ目に、「負債」です。これは、「企業がいずれ返す必要のある資金」です。主に銀行からお金を出してもらいます。銀行は、貸すことによる対価として、利息を受け取ります。企業は決められた利率に基づいて利息を定期的に支払い、最終的には借りた金額の全額である元本とともに銀行へ返済します。

 

2つ目は、「資本」です。これは、「企業が返済する必要のない資金」です。これは、個人や機関投資家と呼ばれる出資者がお金を出し、株券と交換します。

 

企業にとっては、返済する必要のない資金ですが、出資者は出資したことの見返りとして、会社の儲け(=利益)の分配を受けます。企業は、出資者に対して出資額に応じた配当金を支払ったり、出資者の株式を買い取るなどして、還元する必要があります。

 

3つ目は、「収益」です。これは、自らのビジネスにおいて、モノやサービスを提供したことにより入ってきたお金です。これは、負債や資本と違い、「誰かに返済する必要も、分配する必要もない資金」です。

 

これら3つのお金を、例えばあなたが海外へ留学することに置き換えて考えてみたいと思います。

 

留学するには、通常多額の資金が必要となります。留学の際にも資金を調達するには、3つのパターンが考えられます。

 

一つは、返済の必要な奨学金を借りることです(=負債)。学生用に利率は低いものの、利息を毎月支払い、最終的には元本と合わせて返済していくことになります。

 

また、親にお金を出してもらえる人もいるかもしれません(=資本)。この場合は、おそらく返済義務はなく、将来何らかの形で親孝行という名の還元をしてく必要があります。

 

もしくは、これまで自ら働いてきた給与から、留学費用をまかなう人もいるでしょう(=収益)。

 

このように、お金を調達するには、大きく3つの種類があるということをまずは押さえておく必要があります。

 

  • 貸借対照表でお金の3つの経路と流れの向きを確認

 

そしてこれらの資金は、企業が開示している「貸借対照表」という情報で確認することができます。貸借対照表とは、企業の財政状態を表したもので、基本形は以下の通り、「資産」「負債」「純資産(=資本)」が構成要素です。

 

 

 

 

貸借対照表の右側は、「だれからどのくらいのお金を調達したか」を表し、左側は、「調達したお金をどのように運用しているか」を示しています。つまり、企業に流れてくるお金の入り口は右側にあり、真ん中のドアを通過して左の部屋に流れ込むという「お金の流れる方向」を意識しながら見ると良いでしょう。

 

 

なお、3つ目のお金である「収益」から、必要な費用を差し引き、最終的に「利益」が求められます。企業活動により得られた利益は、純資産(Room C)の「利益剰余金」としてプールされています。このように、貸借対照表を見ることで、3つの資金の調達状況を把握することができます。

 

  • 特に「負債」の割合に注目する

 

3つの異なる経路から会社へ入ってきたお金ですが、特に注意しなければならないのは、「負債」です。なぜなら、ここに企業の存続(言い換えれば「倒産」)にかかわる重要な情報が入っているからです。

 

企業は返済の必要なお金である「借金」(=有利子負債)を返せなくなった時に、倒産します。そのため、調達してきた資金のなかで、負債が7割以上を占めている場合は、一般的に安全性が低い企業であると判断されます。

 

まずは、ビジネスのスターティングポイントである3つの資金の調達について、「貸借対照表」を使って資金の経路と流れの向きを確認しましょう。特に負債の占める割合に注意を払いながら、企業の安全性をチェックしてみてください。