会計・財務の役割と違い:財務三表の目的と関係性

ビジネスにおける共通言語とは

 

企業の価値を適切に評価する上で必要なビジネスツールがいくつかあります。会計や財務の知識もその一つです。会計と財務は異なりますが、「財務会計」という言葉などもあり混同されることがあります。それでは会計と財務には、どのような違いがあるのでしょうか。

 

まず会計とは、ビジネスにおける共通言語のことです。会計は、ビジネスにおけるコミュニケーションの土台となるツールといえます。会計を知ることで企業の数字の作り方を理解することができます。一方、財務を知ることで、数字の使い方を理解することができます。

 

これは、包丁の職人とプロの料理人の関係性に似ています。包丁の職人は、包丁の作り方を熟知しています。だからといって、完成した包丁でプロの料理人のような包丁さばきができるとは限りません。その逆も同じです。プロの料理人にとって包丁は必要不可欠ですが、その作り方の詳細を必ずしも知っている必要はありません。

 

両者は包丁というツールを作る側と使う側という関係性において、異なる役割であることが理解できます。

 

会計は「過去」であり財務は「未来」

 

また会計と財務は、時間の概念によっても分けることができます。会計とは、企業活動の結果を数値にして表したものであり「過去」を扱う役割を担っています。一方で、財務とは、会計によってつくられた過去の情報をもとに、将来を予測するために使われるため「未来」を扱う役割となります。

 

会計や財務を使って企業の過去と未来を理解し適切な評価を行うために、会計士やプロの財務アナリストになる必要はありません。そこで経営者は、「会計や財務で使われる共通の製品は何か」を押さえておくことが重要となります。

 

会計というツールでつくられた製品とは、財務諸表です。財務諸表には、主に「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」の3つの種類があり財務三表と呼ばれています。企業の事業活動を把握するためには、いつかの切り口で企業の実態を立体的に捉える必要があります。

 

企業を評価する上では、残念ながら万能包丁はありません。それぞれの切り口に必要な包丁をそろえておく必要があり、そのために3つの種類の財務諸表が必要なのです。プロである必要はありませんが、これらの基本的な使い方を知らずにつかみどころを間違えれば、会社経営で痛い目にあってしまいかねません。

 

財務三表の目的と関係性

 

まず財務三表は「現金の流れに関係するか」という観点からみると、「貸借対照表・損益計算書」と「キャッシュフロー計算書」の大きく2つに分けることができます。ビジネス上の取引においては、現金が常に動いているわけではありません。例えば、クレジットカードなどでものを購入した際など、現金の動きはその時点ではないものの、お店と消費者との間でビジネス取引が成立しています。

 

このように、現金の動きがないビジネス取引も含めて企業のビジネスを包括的に捉えるために作られるのが貸借対照表と損益計算書です。

 

貸借対照表では、「決算時点で将来の儲けに影響する財産や借金がどのくらいあるか」を把握します。また、損益計算書では、「決算までの一年間でどのくらい儲けたか」について確認することができます。貸借対照表と損益計算書では儲けである利益に焦点が当てられています。利益は、必ずしも現金である必要はありません。

 

一方、企業はどんなに利益がでていても、現金での支払が滞れば倒産します。そのため、企業活動の全体像を捉えることと同じく重要なのは、やはりキャッシュの動きです。キャッシュフロー計算書は、お小遣い帳のように現金の動きだけに焦点を当てて、企業活動を把握します。

 

このように財務三表は、企業の実態を会計・財務の側面から立体的に捉える上で非常に役に立ちます。利益の動きとキャッシュの動きを包括的に捉えることにより、因果関係や相関関係を理解することができるようになります。