企業のパフォーマンスは「数値でできている」わけではない

  • パフォーマンスは言葉でできている

 

「あなたは、あなたの食べたものでできている」

 

ダイエットをしたことのある方なら、一度はきいたことのあるフレーズではないでしょうか。体内の細胞は約2か月ですべて入れ替わり新しくなるといわれています。

 

それでは、売上や利益など数値であらわされる企業のパフォーマンスはどうでしょうか。それらは「言葉」でできています。言葉を変えずにパフォーマンスを変えることは不可能です。身体が2か月という時間をかけて変わっていくように、パフォーマンスもまた言葉を変えることにより、時間をかけて徐々に変化していきます。

 

  • 非財務パフォーマンス

 

企業のパフォーマンスとは、売上や利益といった「財務パフォーマンス」の他に、それらのパフォーマンスに繋がる顧客満足度や研究開発活動といった「非財務パフォーマンス」があります。

 

財務パフォーマンスを測定する際には、測定する必要のある対象や範囲、また算定方法について会計基準というしっかりとしたルールがあります。そのため、企業が独自に設定する必要はありません。

 

一方、非財務パフォーマンスについては、設定の義務もルールもないため、これは企業が独自に設定していく必要があります。非財務パフォーマンスとは、例えば顧客満足度や新規顧客獲得数などがあります。

 

本来、非財務パフォーマンスを改善することが、のちに財務的なパフォーマンス向上へつながります。そのため、どの非財務パフォーマンスを選択・測定・モニターしていくかは、企業にとって重要な意思決定となります。

 

しかし、多くの企業は、適切な非財務パフォーマンスを設定することが困難であると感じています。それは、「言葉」の問題が解決されていないからです。

 

  • 思考停止ワード

 

非財務パフォーマンスを設定する際の、出発点は「戦略」です。戦略の内容によって、適切な非財務パフォーマンスが選択できるかが左右されます。

 

例えば次のような「言葉」が、戦略の中に含まれていないか確認してみてください。

 

「グローバルに挑戦します」
「実行力を強化し、経営効率を向上させます」
「お客様と共に価値向上を目指します」
「潜在ニーズを発掘するニュー・コンセプト・イノベーション」
「シナジーを発揮できるような職場環境や風土」
「持続的な社会づくりに積極的に貢献します」
「スピーディな経営判断」
「タイムリーな成長投資」
「お客様ニーズに合った付加価値」
「効率化を推進するための新製品」
「自律的なコーポレートガバナンス」
「オーガニックな成長」

 

これらの言葉は実際に使われている言葉であり、無意識のうちに使ってしまいがちな「曖昧な言葉」「形式的な言葉」です。もしくは、「思考停止ワード」とも呼べるかもしれません。

 

これらの言葉を使っているうちは、各社において重要な非財務パフォーマンスが何であるかは明らかにすることができないため、適切な指標を設定することは困難です。

 

例えば、「シナジー」という言葉があります。日本語では、相乗効果と訳されています。しかし、一般的になったとはいえ、シナジーという言葉自体を理解する人は少ないです。

 

そして、会社によっては、親会社と関連会社間のシナジーを指している場合もあれば、合併買収などによって2社が一つの会社になることによるシナジーを意味している場合もあります。
 

  • 言葉の意味をそろえる

 

同じ言葉を異なる意味合いで用いては、コミュニケ―ションは成り立ちません。これらの言葉を置き換えて、誰もが同じ意味やイメージを持つことによってはじめて、適切な指標の設定の一歩を踏み出すことができるようになります。

 

「曖昧な言葉」「形式的な言葉」を見つけるには、「○○性(健全性、成長性、生産性)」「○○力(成長力、変化対応力、技術力)」「カタカナ言葉(ダイバーシティ、シナジー、サステナビリティ)」「○○化(効率化、再活性化、最適化)」「○○的(持続的、具体的、積極的)」「○○感(スピード感)(ワクワク感)」といったキーワードに注意してみてください。

 

言葉を変えることで、適切な非財務指標を選択し、パフォーマンスを向上させていきましょう。