企業の成長は投資家の価値を増大させているか
企業の積極的な投資は、企業が将来にわたり成長していく上で重要です。しかし、売上高が成長しているにもかかわらず収益性が低いため、それが財務的な側面からみた企業価値に結びついていない場合があります。ここでは、財務的な側面からみた企業価値を、株式の時価総額と捉えます。
投資家は、企業の成長が企業価値の増大に繋がっているかを確認する必要があります。 確認の方法の一つは、収益性につながる持続的な成長の水準を知ることです。持続的な成長を維持は、「企業が資金を無駄にしていないか」「過度に外部から資金を借り入れしていないか」を確認する上で非常に重要です。
「成長が投資家・株主の価値に結びついているか」「投資の方向性が間違っていないか」を確認するための指標として、「サスティナブル成長率」があります。
サスティナブルとは、「持続可能性」を意味する言葉です。サスティナブル成長率は、「銀行からの借り入れなどの外部資金に頼らず、また、新たに株式を発行し株式を増やすことをせずに、内部のキャッシュフローによる投資で継続的な成長を実現できる成長率」です。
企業が、持続可能な成長の範囲で売上を改善するためには、内部に蓄積されたキャッシュフローである内部留保を財源に新たな資産を増やす必要があります。
持続可能性の高い成長率とは
サスティナブル成長率は、以下の計算式により求めることができます。
サスティナブル成長率=自己資本利益率(ROE)×再投資率(内部留保率)
ROE(株主資本利益率)とは、「企業が投資家・株主からのお金を使って、どのくらい利益を生みだしたか」という稼ぐ力や収益性を測るものさしです。ROEは、以下の計算式で算出されます。
ROE=当期純利益÷自己資本 |
例えば、当期純利益が100億円、投資家・株主の出資金である自己資本が1000億円の場合、ROEは、10%となります。
また、再投資率(内部留保率)とは、純利益(税金などを支払った後の利益)から投資家・株主へ配当を支払った後に残る利益の割合です。再投資率(内部留保率)は、以下の計算式で算出されます。
再投資率=(1 – 配当性向) × 100 (%)
例えば、配当性向が30%ということは、利益の30%分を配当として投資家・株主に還元することを意味します。
上記の例(ROE10%、再配当率70%)を使い、「サスティナブル成長率」を計算すると、7%(=10%×70%)となります。この「7%」という数値は、外部資金や新しい株を発行することなく、内部資金だけで持続的に成長できるスピードです。
最適な成長率を知る
企業が外部資金に頼らず、また、新たに株式を発行して増資することなく、サスティナブル成長率を向上させるためには、次のような改善が必要になります。
「利益率」「資産回転率(=企業の資産が有効に活用されているかどうかを測るための指標)」「自己資本構成比率(=企業の全ての資本に占める投資家・株主からの資金の割合で、経営の安全度を測るための指標)」「配当性向」などの改善です。
サステナブル成長率と実際の成長率を比較し、サスティナブル成長率よりも実際の成長率が低い場合は、パフォーマンスが低迷している可能性があります。一方、サスティナブル成長率よりも実際の成長率が高い場合は、過度の成長により何らかの問題を抱えている可能性があります。
サスティナブル成長率と実際の成長率を比較し、企業の将来の価値を評価する際に役立ててください。