企業のパフォーマンスを適切に分析する為の比較可能性とは

人が誰かと信頼関係を築きたいとき、自ら心を開き、自己開示することが有効です。同じ様に、企業が投資家や銀行など重要なビジネスパートナーとの信頼関係を構築するためには、情報を開示することが必要不可欠です。

 

企業が開示している情報には、記述による説明の他、売上や利益をはじめとする財務数値やその他のさまざまな数値があります。

 

開示された数値を利用する側にとって重要なのは、数値がなんらかの比較ができる状態で開示することです。比較ができる状態の数値を、「比較可能性がある」と表現します。

 

比較可能性が重要なのは、ある一時点の単独の数値に意味を与えることは不可能だからです。人は、比較によってのみ、数値の本質的な意味を捉えることができ、適切な判断に役立てることができるようになります。

 

今回は、特に企業のパフォーマンスに関連する数値の比較可能性について見ていくことにしましょう。

 

比較の目的と種類

 

企業が提供するパフォーマンス関連の数値は、どのような分析を行うために何と比較されるのでしょうか。一般的な分析の目的と方法には、3つの種類が挙げられます。

 

①時系列分析:時間とともに変化していく現象の比較
②同業他社比較分析:他の企業との比較
③予実分析:目標値と実績値の比較

 

中でも、企業のパフォーマンスを適切に分析するためには、①時系列分析が最も重要です。

 

比較における重要な質問

 

企業のパフォーマンスについて、複数年度にわたる数値を比較する時系列分析を行う際に重要な2つの質問があります。1つ目は、「現在のパフォーマンスは、過去のパフォーマンスと比較してどうか」です。そして2つ目の質問は、「現在のパフォーマンスは、企業の将来望むパフォーマンスと比較してどうか」ということです。

 

これらの過去・現在・未来といった時間軸上のパフォーマンスの変化についての2つの質問は、最初に行うことが大切です。企業のパフォーマンスを分析するということは、パフォーマンスがどのように将来の期待値にむけて時間の経過とともに変化しているかを適切に把握することだからです。

 

1つ目のの質問である「現在のパフォーマンスは、過去のパフォーマンスと比較してどうか」は、パフォーマンス改善のために、「企業が過去に採用した計画とアクションがうまくいったかどうか」について確認することができます。

 

2つ目の質問である「現在のパフォーマンスは、企業の将来望むパフォーマンスと比較してどうか」は、「企業が理想とする状態にパフォーマンスを高めるための適切なアクションが十分に機能しているかどうか」を確認することができます。

 

時系列分析とその他の分析との関係

 

上記の時系列分析における比較以外の比較、例えば、「地域別売上高」「事業別利益率」「顧客セグメント別満足度」などは、時系列分析を理解したり、説明したりする際に有益な情報となります。つまり、それら他の比較による分析は、パフォーマンスの改善のための原因分析のために使われる比較です。

 

数値を比較する際には、さまざまな方法が存在します。そのため、最も重要な分析の目的を明確にする必要があります。

 

企業がパフォーマンスに関連する情報を適切に情報利用者に分析してもらうためには、上記の2つの重要な質問に答えられる数値をまずは提供する必要があります。なるべく長い期間にわたる時系列データとグラフを提供し、比較可能性の高い情報開示を行いましょう。