KPIの「つながり」は「因果関係」「一貫性」「整合性」が重要

KPI(Key Performance Indicators)を設定し、その数が増えれば増えるほど、何と何がどのようにつながっているのか、わからなくなってくることはないでしょうか?この点について、今回は3つのつながりの観点から考えてみたいと思います。

▼つながり(その1)~因果関係~

現在、多くの企業から開示されている報告書等では、実に多くの指標が開示されています。それらには、財務的な指標であるROE(株主資本利益率)や非財務的な指標である顧客満足度、従業員満足度などが含まれています。

そして開示の方法を見ると、多くの場合テーブル形式で、各指標はリスト化されています。このような状態では、各指標がお互いにどのように関連しているかまでは理解することはできません。

実は、非財務指標が財務的帰結にどのように影響しているのか、その因果関係を見極めて、導入している企業は、していない企業に比べ、5.14%もROE(株主資本利益率)が高いという結果があります。

この結果は、リストファー・D・イットナー(ペンシルバニア大学 ウォートン・スクール 教授)とデイビット・F・ラーカー(ペンシルバニア大学 ウォートン・スクール教授)が発表した調査研究「非財務指標の罠」(2003年11月ハーバードビジネスレビュー誌)で明らかとなっています。

▼つながり(その2)~一貫性~

KPI間のつながりを確認するには、一貫性の観点からチェックをする必要があります。企業が開示している直近単年度の報告書内では、同じKPIにもかかわらず、異なるページでは異なる表現が使われているケースがあります。

また、報告書に記載のKPIを比較してみると、複数年度にわたって継続して開示しているKPIが部分的にある一方で、新しいKPIが増えていたり、これまで開示していたKPIが開示から外れている年度も見受けられます。

このように単年度の報告書内や複数期間にわたる報告書間において、KPIの一貫性が保たれていないことがあります。その場合、変更理由が開示されていないと、せっかく開示している情報でも信頼性を損なうことがあります。

▼つながり(その3)~整合性~

企業の開示のトレンドは、単に過去の財務報告ではなく、過去・現在・未来の時間軸で企業の価値創造ストーリーを伝達する統合報告へシフトしてきています。そのような中、従来に比べ将来情報の比重が高まってきています。

KPIのつながりを確認する上で最も重要なポイントは、企業のビジョンや理念として掲げている内容が、経営者の重視しているKPIと整合性が取れているかどうかという点です。

長期的な視点で経営を行っていると主張しているにも関わらず、重視している指標が財務的な指標に偏っている場合は、整合性を確認することが困難です。そのような場合は、最終的な企業の目的を明確にし、指標化することが重要となります。