組織のパフォーマンスを継続的に改善する指標設定における心構え

世の中には、実に多くの指標が存在しています。指標とは、「物事を判断したり評価したりするための目じるしとなるもの」です。身近な例でも、ダイエットをしている人は体重を測ったり、体調の悪い時には体温を測って、その数値を基に一喜一憂したり、安心したりします。

 

様々な指標によって、わたしたちの生活は日々左右されているといっても過言ではありません。

 

企業においてもまた、「総資本利益率」や「売上高伸び率」といった財務指標の他、「顧客満足度」「従業員満足度」さらには「CO2 排出量」といった必ずしも金額には換算できない非財務指標と呼ばれるものも多く存在します。

 

これらは、企業のパフォーマンスを継続的に改善するために設定されています。企業もそのステークホルダーもまた、これらの指標によって一喜一憂したり、安心したり、さらには重要な意思決定に利用しています。

 

しかし、その設定された指標は適切でしょうか?さらに言えば、必要でしょうか?

 

企業において、ビジネスの目的を達成するための適切な指標が設定されない場合、次に挙げる2つの大きなリスクがあります。

 

1)目的を達成するために時間がかかりすぎてしまう
2)目的を達成できないだけでなく、知らないうちに全く意味のない目的に向かって貴重なリソースを割いてしまう

 

指標の設定とは、報告のための形式的なものではなく、企業の目的を達成するためのもっとも重要なプロセスの一つなのです。

 

指標設定における重要ポイント

 

かの有名な理論物理学者・アルバート・アインシュタインが興味深い言葉を残しています。

 

“Not everything that can be counted counts and not everything that counts can be counted.”
Albert Einstein

 

「すべての数えられるものが大事なわけでもなく、大事なものがすべて数えられるわけでもない」という意味です。ビジネスにおいても、一番定量化したい部分は定量化しづらいとの声を聴くことが多くあります。

 

また、残念ながら、現在存在している指標の多くは、入手可能なデータに依存しており、定量化ができると言ってもすべてが重要な指標とは言えません。

 

ビジネスにおいては、目的達成のためにどのような結果を出したいのかを明確にしたうえで、適切な指標を設定することが重要になってきます。そのためには、いきなり定量化することではなく、まずは言語化が大切です。以下に、言語化するためのポイントを挙げます。

 

(1) まず、「数える」ことの前に、「自らの企業にとって大事なことは何か」「目的の達成のために、具体的にどのような結果や成果を出したいのか」を明確にする。

 

(2) 次に、求める「結果や成果」が明確になったら、定量化を適切に「デザイン」し、実行に移す。

 

(3) さらに、設定した指標を、経営計画、レポーティング、そして戦略実行へと統合する。

 

以上のように、適切な定量化の出発点は、「ビジネスの目的(ゴール)を明確に記述する」ことにあります。この最初のステップが無ければ、数値として定量化してもその数値には意味がない可能性があります。

 

様々な指標設定

 

パフォーマンスを測定することは、一過性の行事ではなく、継続的なプロセスです。指標を設定し、指標を使ってパフォーマンス改善のための計画を実行に移す一連の活動です。つまり、ビジネスプランや中期経営計画会議などで、ブレインストーミングによって設定された書面上の形式的な指標ではありません。

 

指標の設定には、戦略立案に有効なバランス・スコアカード(BSC)や品質を管理する際に効果のあるシックス・シグマなど、数多くの手法が存在しています。

 

さまざまな指標の設定方法のなかには、内部管理目的に効果的な指標でも、そのまま外部開示には適さない場合もあります。また、特定のプロセスにのみ有効な指標の設定手法なども存在します。

 

ゴールが明確になっても、指標の設定方法の選択を間違えれば、ゴールを計画とおりに達成することが難しくなります。適切な指標を設定するには、目的を明確にすることと、適切な設定方法の選択が重要であることを認識しましょう。