- もともとは同じ屋根の下
企業の財政状態を表す「貸借対照表」と企業の儲け(収益性)を表す「損益計算書」は、物理的には別々の計算書類です。今では別々の決算書ですが、大元は、下図のとおり「T字」の形をしたシンプルな1つの表でした。これをT字勘定と言います。現在でも、「試算表」として使われています。
- 「1年間の利益」を計算するために離れ離れに
現在、企業は「継続すること」を前提にビジネスが行われています。一方、会社の「1年間」を切り取って、会社がどのくらい儲かったか(=利益)を計算し、利害関係者に対して利益を分配する必要があります。
上記のT字勘定から、利益の計算に必要な収益と費用を切り離します。切り離されてできた2つの計算書類が、「貸借対照表」と「損益計算書」です。
- それでも「つながり」は消えない
切り離されたとはいえ、貸借対照表と損益計算書には「つながり」があります。
損益計算書で計算される「一年間」の利益は、通常株主へ一定の割合で分配されることになります。そして、分配後に残された利益は、「当期未処分利益」という名前が付けられます。ここまでが、損益計算書で行われる計算です。
「当期未処分利益」は、社内で蓄積されていきます。蓄積する場所は、貸借対照表にあるため、損益計算書から貸借対照表へ移動します。貸借対照表では、資本の中の「利益剰余金」という項目で蓄積されていきます。
つまり、損益計算書と貸借対照表は、「当期未処分利益」(損益計算書)が「利益剰余金」(貸借対照表)の中に取り込まれることを通じて繋がっているのです。
これは、例えるなら、USBで繋がれたパソコンとプリンターのような「つながり」といえます。
貸借対照表をパソコンに、損益計算書をプリンターに例えてみましょう。パソコン(貸借対照表)の中には、さまざまな情報がストックされています。そこに、USBで繋がれたプリンター(損益計算書)で最終的な利益(=未処分利益)だけをスキャンして、パソコン(貸借対照表)へデータを送信します。送信されたデータは、パソコン(貸借対照表)内の「利益剰余金」というフォルダーにどんどん保存されていきます。
以上のように、貸借対照表とは、ある一時点における企業の財政状態を把握することができ、損益計算書では、一年という限定された期間の利益をみることができるようになっています。
会社の数値は、いろいろな場所で、交差しながら変動しています。そのつながりがどこにあるのかを理解し、決算書を活用して行きましょう。