決算書が生まれた歴史的背景を知れば決算書が身近になる

  • 決算書の歴史を知る

 

あなたは「決算書」と聞いたとき、どのような印象がありますか?難しそうだなという風に感じるかもしれません。確かに、企業の決算書を詳細に読み解くためには、膨大な会計の知識が必要となります。

 

しかし、決算書の歴史を紐解くと、最初はいたってシンプルなものであることがわかります。そしてそのシンプルな構造は昔も今も変わっていないのです。どのようにして決算書が作られ始めたのかについて知ることは、決算書をシンプルに捉え、理解するのに役立ちます。

 

  • 決算書の歴史=株式会社の歴史

 

決算書の歴史は、中世ヨーロッパ・大航海時代(15世紀半ば~17世紀)にさかのぼります。会計の歴史は、株式会社の歴史でもあります。世界初の株式会社、「オランダ東インド株式会社」は歴史の授業から記憶にあるのではないでしょうか。

 

大航海時代は、ヨーロッパ人が新航路・新大陸を発見した時代です。例えば、バスコ・ダ・ガマのインド航路開拓、そしてコロンブスのアメリカ大陸発見などです。

 

航海先から、「胡椒」「砂糖」「絹」などの希少なぜいたく品をヨーロッパに持ち帰り、巨額の利益を貿易により得ていました。

 

しかし、航海のためには、「船を作る(もしくは借りる)」「船長や船員への報酬を支払う」「航海先で物物交換するための積み荷品を購入する」など、多額の資金が必要となります。

 

その為、一人のお金持ちにすべてを出資してもらうという従来のスタイルから、一人当たりの負担額を減らす代わりに、多くの人に出資してもらえる形態で資金を集めたのです。

 

「資金提供者には株を発行し、設けた利益を分配する。」これが株式会社の始まりです。設けた利益を分配するための根拠として、決算書は作られました。

 

  • 決算書の基本形

 

現在では、企業の決算書は主に、「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」の3つあります。決算書が作られた当初は、下図のとおり「T字」の形をしたシンプルな1つの表でした。これをT字勘定と言います。現在でも、「試算表」として使われています。

T字の右側は、資金の入り口であり、集まった資金の内容を記載します。T字の左側は、右側で集めた資金の使い道であり、何にいくら使ったのかを記録します。お金の出入りを記録したものです。

 

お金の出入りは、合計で5つのパターンに分けることができます。

 

まず右側の入ってくるお金(入口)は、1)借りたお金でいずれ返すべきもの(負債)、2)出資されたお金で返す必要のないもの(資本)、3)自らのビジネスで儲けたお金(収益)です。

 

そして、入ったお金の使い道(出口)は、大きく2つあります。1)将来価値を生み出し集めたお金を増やすもの(資産)と、2)将来経済的価値を生み出さず集めたお金を減らすもの(費用)です。

 

 

 

  • シンプルに捉える

 

現在の決算書は、膨大な細胞分裂をしたあとのように非常に細かく列挙されているように見えるかもしれません。

 

しかし、根本的な構造は今も昔も変わりません。現在では、上記の基本形が3つ(「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」)に分かれて、各カテゴリーの中味もより細分化されているだけなのです。

 

物事の始まりはいつもシンプルです。会計の歴史的背景を踏まえ、会計情報をシンプルに捉える5つのカテゴリーが見えるようになれば、難しそうな決算書も身近に感じることができるようになります。