経営者が重視している指標は何か
世の中には、企業の経営状態をとらえるための経営指標が数多く存在しています。例えば、企業が効率的に設けているかを表す「収益性」の指標や、借入金の返済能力を示す「安全性」の指標などがあります。
さまざまな切り口があり、数も多いため、「どのような指標を選択し、経営に活かすか」というところに、経営者の重要な判断が必要となります。
判断を行う際には、「企業の短期・中期・長期の価値創造において影響を与える事項は何か」を、経営者が明確に理解している必要があります。
投資家にとって最も重要な視点とは、経営者が何を重要と捉えているかを知ることです。そして、その情報の一つとして、どのような指標を重視しているかを見極めることは重要となります。
例えば、「キャッシュフロー」を重視している企業において、関連する指標にはどのようなものがあるでしょうか。以下に、キャッシュフローに関わりのある指標の一つである「キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)」について詳しく見ていくことにします。
キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)
キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)とは、「仕入れから販売に伴う現金の回収日数」で、以下の計算式より算出することができます。この日数が小さいほど、企業の資金繰りが楽になることを意味しています。
キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)
=売上債権回転日数+棚卸資産回転日数-仕入債務回転日数
キャッシュの回収は、企業の資金繰りという観点からは、早い程有利になるため、「売上債権回転日数」と「たな卸し資産回転日数」の2つは短いほど良いとされます。一方、「仕入債務回転日数」は長いほど、資金繰りの影響は有利に働きます。
- 売上債権回転日数(商品を販売してから売上債権を回収するまでにかかる日数)=売上債権÷年間売上高×365日
- 棚卸資産回転日数(商品を仕入れてから販売までに掛かる日数/在庫期間)=棚卸資産÷年間売上原価×365日
- 仕入債務回転日数(商品を信用で仕入れてから現金で支払うまでの日数)=仕入債務÷年間売上原価×365日
例えば、下記のような条件でキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)を計算すると、20日となります。「仕入」から「回収」というトータルのキャッシュにかかわるサイクルの長さが20日という意味です。
売上債権回転日数=50日
棚卸資産回転日数=30日
仕入債務回転日数=60日
キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)=50+30-60=20日
なお、米アップル社や米アマゾン社では、このキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)がマイナスの値となっている年があります。債権の回収が早く、在庫期間が短いが、仕入れにかかる支払はずっと後でよいため、非常に資金繰りが楽というわけです。
注意点
キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)を見る際には、気を付けなければならないポイントがあります。それは、仕入債務回転日数があまりにも長い場合です。
仕入債務回転日数が長いことは、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)の数値の上では有利に働きます。
一方、取引先の立場からは、売上債権回転日数が長引くため、「取引先との関係性」にダメージを与える可能性を考慮する必要があるでしょう。「取引先との関係性」も、企業にとっては重要な資産だからです。
まずは、企業経営者がどのような指標を重視しているかに目を向けてみてください。その上で、「キャッシュフローが大事」だと述べている企業においては、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)の推移などを使い、数値の改善の傾向があるかどうかを確認しましょう。