企業の開示する情報のピースを繋げる「システム思考」とは

企業が「従業員、顧客、株主」といった内外のステークホルダー(=利害関係者)から、信頼を得るにはどのような方法があるでしょうか?企業が自社の価値創造活動について自ら誠実に開示することは、企業が信頼を得る上でとても有効な方法です。

 

情報を開示する上で重要なのは、それぞれの情報のピースが1つの物語のようにつながっていることです。企業が伝えたい情報も、内外のステークホルダーが知りたい情報も、「つながりのあるストーリー」としての情報を必要としているのです。

 

「つながりのあるストーリー」を伝達する上では、「システム思考」という考え方が役に立ちます。今回は、この「システム思考」について見ていくことにしましょう。

 

▼「システム思考」とは?

 

システム思考は、「社会や人間が抱える物事や状況について、目の前にある個別の要素ではなく、それぞれの要素とその「つながり」が持つシステムとして、その構造を理解すること」と定義されています。

 

「組織」を意味する「オーガニゼーション(=Organization)」には、臓器や器官を意味するOrganが含まれています。組織とは、まさに器官が集まって生命を維持している生命体のようなものです。

 

企業の価値を構成する要素も、それぞれが独立しているのではなく、互いに組み合わされたり、つながることによって、継続して価値を創造していくことができます。

 

システム思考とは、企業の価値創造ストーリーの背後にあるこの「つながり」の構造を理解して捉えることです。

 

▼システム思考のための基本ツール

 

システム思考のための基本ツールに「ループ図」と呼ばれるものがあります。基本的には、以下に挙げる5つの構成要素があります。

 

1)変数:変えたいと思っている変化の対象
2)矢印:「原因」と「結果」の関係性
3)矢印の種類:原因が結果に及ぼす増加などのせいの影響(+)、もしくは、減少などの負の影響(-)
4)ループの種類:「自己強化型」(それ自体の変化がますます強化していくタイプ)、「バランス型」)自ら修正し、変化を打ち消す働きをし、ある幅の中で安定をしていくタイプ)
5)ループの名前

 

例えば、「研究開発(R&D)ポリシー」「技術/ノウハウ」「人材や特許に対する投資」「期待される売上増加」「ターゲットとなるマーケットシェア」という項目について、ループ図を使って関係性を示したものが下図になります。

 

 

▼因果関係をロジカルに理解する

 

実際のビジネスにおいては、もっと矢印が増えるかもしれません。また、別のループとくっついたり、時間の経過とともに形を変えていくものもあるでしょう。中には、矢印でつながらない要素がいくつも出てくるかもしれません。

 

例えば、「中期の経営計画を立案する」「企業の価値創造活動をストーリーとして伝達する統合報告書を作成する」「企業の長期の価値創造における重要なパフォーマンス指標(=KPI)を設定する」などの際に、ループ図を使って物事のつながりを可視化してみてください。

 

以上のように、システム思考における「ループ図」は、「つながりの設計図」として、さまざまな物事の因果関係をロジカルに理解するのに役立ちます。

 

物事のつながりが明確になれば、企業が伝達したい価値創造ストーリーは、納得感の高いものとなり、「従業員、顧客、株主」といった内外のステークホルダー(=利害関係者)からの信頼を得ることができるようになるでしょう。