国際統合報告フレームワーク(以下、「フレームワーク」)では、「指導原則」の一つに「結合性」という概念があり、そこには3つの大きな構成要素として、「組織」「情報」「利用者」におけるつながりを考慮する必要があることはこちらの記事(「3つの結合性の種類」)で触れたとおりです。
今回は、その中でも「情報」のつながりに焦点を当て、組織の価値創造の「全体像」を示すとは一体どういう事なのか?について考えてみたいと思います。
価値創造活動の「全体像」について、サッカーのゲームを例に挙げて考えてみます。
サッカーの試合は前半と後半に分かれていますが、2つあわせて一つの試合となっております。そして、ハーフタイムでは前半戦での戦略や選手の配置換え、得点に至ったもしくは至らなかった理由を振り返りつつ、後半戦に臨みます。
このサッカーの例をビジネスの世界、そして統合報告の観点から考えてみると、前半戦は企業の「過去から現在」の期間の価値創造にあたり、後半戦は「現在から未来」の期間に相当します。
ハーフタイムでは、コーチである経営者が、過去から現在までの業績、人的資本や知的資本など企業の様々なリソースの組み合わせ、そして戦略などについて振り返ります。さらに、将来に亘ってどのような資源配分を行い、戦略を実行し、ターゲットとなる業績を達成するかの分析を説明する必要があります。
一方、現状の企業報告の多くは、前半の実績だけを、しかも財務報告を中心としてしか見せておらず、過去の中期経営計画の分析や評価、さらには将来の価値創造の可能性とリスクを示唆するような説明を提要してきてはいません。つまり、ハーフタイムで練り直すであろう後半戦の戦略やそこに潜むリスクについては必ずしも明確に開示されているとは言えません。
企業の価値創造の全体像を示すには、組織の様々な資本の組み合わせがどのように組織のビジネスモデルを通じてパフォーマンスにつなげているのか、また将来に亘ってそれを持続できるのか否かについて、過去から現在、現在から未来といった時間軸を考慮して伝達することが重要だと考えられます。
そして、ハーフタイムで、現在起こっている事柄の「つながり」やそれを俯瞰して全体像を把握することによって、初めて組織も、そしてオーディエンスである情報利用者も現状の先にある未来について理解できるようになります。 したがって、新しく中期経営計画を打ち出す年度においては特に、前期の中期経営計画の分析と説明が非常に重要となってきます。