3つの結合性の種類

国際統合報告フレームワーク(以下、「フレームワーク」)では、「指導原則」の一つに「結合性」(Connectivity)があります。

「結合性」そのものは、統合報告書の中に記載する項目ではありません。開示されている情報の背後にある考え方です。

情報の「結合性」を高めていくためには、大きく3つの点を考慮する必要があります。それらは、1)組織、2)情報、3)利用者です。

1)組織内の各部署間の結合性
まず、情報の結合性を高めるためには、情報そのものだけを繋げようとしても上手くいかない場合が多いのが現状です。統合報告書は、組織の価値創造の全体像を示し伝達する手段であるため、様々な部署の協力なくして作成することが不可能です。

情報の結合性を高める前提条件として、異なる部門間でコミュニケーションをとること、そして理想的には、それが情報開示のためだけでなく、長期の価値創造のために組織文化として根付いていくことが重要になります。

2)情報の結合性
前提条件を踏まえた上で、情報そのものの結合性を高めるためには、2点大きく考慮することがあります。まず1点目は、組織の価値創造の「全体像」を示すこと。そして2点目は、特に価値創造において重要な部分については、「詳細情報」を示すこと。

「木を見て森を見ず」とよく言いますが、森である「全体像」だけでなく、「木」である細部についても「詳細情報」として記載する必要があります。ここで重要なのは、情報利用者が「全体像」と「詳細情報」の往復運動ができるように、組織は情報を開示する事です。

3)情報利用者との結合性
いよいよ統合報告書が出来上がったら、ターゲットとする情報利用者にしっかり読んでもらわなければ意味がありません。統合報告は、統合報告書を作ることが目的ではありません。

コミュニケーションの語源は、ラテン語の”communico”であり、「共有」を意味しています。組織とステークホルダー間のコミュニケーションを成立させるためには、まず組織の価値創造について「全体像」を共有する必要があります。

情報利用者との結合性とは、きちんと伝えたい情報を伝えるだけでなく、「伝わったか」を確かめることでもあります。すでに多くの組織では、「ステークホルダー・ダイアログ」を開催し、重要なステークホルダーとの対話を重視しています。

組織にとっては、スステークホルダーからのフィードバックを受ける為に、テークホルダー・ダイアログという対話の「場」で統合報告書を活用したり、ウェブサイトなどを活用することは効果的な方法です。そして、ステークホルダーにとって統合報告書は、彼らのフィードバックがどのように経営に反映されているのかを知る手段でもあります。

組織と重要なステークホルダーが価値を共創するために、「結合性」の概念では情報利用者との「つながり」についてもカバーしているのです。