企業がパフォーマンスを高めるためには、改善したいパフォーマンスについて定量化してモニターし、管理することが重要です。
パフォーマンスを高めるために設定される指標は、KPI(Key Performance Indicators)と呼ばれています。ただ、KPIを設定するプロセスにおいて発生するコストがあります。このコストの捉え方が、効果的なKPIの設定に影響を与えます。
今回は、KPIの設定プロセスに関連するコストについて見ていきましょう。
2つのコスト
コストには、金銭的なものだけでなく、時間やエネルギーが含まれます。そして、コストには「かけるべきコスト」と「削減すべきコスト」の2種類があります。
前者は「投資」、後者は「ムダ」と言い換えることもできるでしょう。どちらのコストであるかを見極める必要があります。ビジネスを行う上で、KPIの設定や運用の際にも様々なコストが発生します。
例えば、「リサーチコスト」「データを入手するコスト」「データベースの構築・管理コスト」などがあります。さらには、金銭的なコストだけでなく、組織の時間や労力、コミットメントやモチベーションなど、目に見えないコストもカウントしたほうが良いでしょう。
その中で最も削減すべきムダなコストは何でしょうか? それは、「組織の目的や戦略、パフォーマンスの改善につながらないデータを入手しつづけているコスト」です。
「測定すること」は「だれの仕事」か?
ムダなコストが発生している原因の一つに、意識の問題があります。
誰しも目の前の仕事には、必ず目的があります。そしてその目的が達成されたかについて測定することは「本来の仕事」の一部のはずです。なぜなら、「目的が達成されたか?」「結果が改善しているか?」は、測定しない限り把握することが不可能だからです。
しかし、多くの人は、「『測定すること』は自分の『本来の仕事』の一部ではない」という認識をしてしまいます。これは、KPI測定のためのデータを取っている部署の人たちが、KPI設定の「プロセス」に何らかの形で関与していないことが原因です。
「目的が達成されたかどうかを測定すること」に対する正しい認識が無い場合、「面倒なもの」「できればやりたくないこと」になってしまいます。そして、目的を達成することのために測定するのではなく、測定することそのものが目的化されてしまう場合も多々あります。
「ムダ」or 「投資」?
「測定のための測定」「目的のない目標値」、これらは「ムダ」以外の何物でもありません。組織の貴重なリソースをムダなデータ入手に使った上、従業員のモチベーションを下げてしまうのです。これは削減しなければいけないコストです。
KPIのコストパフォーマンスを高める上では、「目的」「戦略的方向性」など将来を起点にKPIを設定することが必要不可欠です。
また、理想的には組織横断的にKPIを設定するプロセスとチームを確立し、パフォーマンス測定に対する正しい理解を根付かせる企業文化も大切です。
KPI設定後の結果だけを共有するのではなく、パフォーマンスチームを中心に、「測定プロセス」に多くの社内関係者を部分的にでも巻き込むことで、測定することへの理解や賛同が得られるようになります。
KPIを設定するということは、無駄なコストではなく、かけるべきコスト(=投資)です。適切なKPIが設定された時には、KPIの本来の役割の一つである「企業のビジョン実現にむけて従業員のモチベーションを高める」ということも、大きなリターンとなって組織に蓄積されていくでしょう。