キャッシュフロー計算書
企業の財務的な状態の過去・現在・未来を把握するための情報である財務三表には、「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」があります。その一つであるキャッシュフロー計算書は、企業のキャッシュの一年間の動きを「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つの切り口で捉えたものです。
投資活動によるキャッシュフロー
今回は投資活動によるキャッシュフローに焦点をあて、見るべき3つのポイントを見ていくことにしましょう。
(なお、キャッシュフロー計算書を作成する方法には、直接法と間接法の2種類あります。実務では、間接法が採用されることが多いため、ここでも間接法を前提に話を進めていきます。)
ポイント1:会社の未来のための投資が行われているか
投資活動によるキャッシュフローでは、「会社の未来のためにいくら投資しているか」を確認することができます。現在得られている利益は、単なる過去の投資の結果で、未来を予測するものではありません。
そのため、利益の数値だけをみていては、企業の未来の利益や価値を予測することはできません。企業の未来の姿を予測するためには、企業が将来に向けた投資の内容について目を向ける必要があります。
企業の未来への投資には、「設備などの固定資産」や「シェア拡大のための買収」などの投資があります。
ポイント2:投資の背後にある「投資判断」は適切か
キャッシュフロー計算書をみると、確かに企業の未来への投資の内容をある程度把握することができます。しかし、さらにそれらの投資について経営者がどのように投資判断を行ったのかを確認することが重要です。
まずは、投資内容が企業の戦略との関係で整合しているかどうかを確認します。企業の戦略はキャッシュフロー計算書には記載されていないため、企業の全体像がわかる統合報告書を使って確認するとよいでしょう。
統合報告書とは、「ビジョン」「ミッション」「戦略」「ビジネスモデル」「パフォーマンス」「ガバナンス」などの項目を含み、企業の活動の全体像を示すことを目的として開示されている情報です。
統合報告書の中で、最高財務責任者(CFO)メッセージを探して、読んでみてください。例えば、「成長投資のためにグループ全体で3年間で1000億円」といったように、規模や期間を確認し、キャッシュフロー計算書における数値との一貫性があるかもポイントです。
また、企業がどのような投資判断の基準をもっているかも重要となります。例えば、「収益性と成長性を2軸にとり、現在ある事業を4つのカテゴリに分け、投資の優先度を決定している」など、確固とした判断基準があるかどうかも、将来のキャッシュフローを生み出すかどうかを左右する要素です。
ポイント3:投資のバランスは適切か
投資活動によるキャッシュフローには、「支出」と「収入」があります。例えば、「有形固定資産の取得による支出」「有形固定資産の売却による収入」「投資有価証券の売却及び償還による収入」「投資有価証券の取得による支出」などです。
まず、これらの投資内容が「本業か」「それ以外か」で分けて、そのバランスを見る必要があります。資金に余裕がある場合は、本業とは別に有価証券に投資している場合もあるでしょう。本業の優先順位度が高いことはいうまでもありませんが、本業をおろそかにしてマネーゲームに走っていないかバランスをみることが大事です。
次に確認しておくべきことは、収入と支出のバランスです。収入が支出を上回る場合は、もちろん投資活動によるキャッシュフローはプラスになります。
ここで注意しなければならないのは、「なぜプラスになったのか」の理由です。固定資産や投資有価証券を売却すれば収入が増えますが、なぜ売却を行ったのかその背景を考える必要があります。
企業が何らかの理由でキャッシュを必要としているのかもしれません。つまり、資金繰りが悪化していることも考えられます。また、売却をするといっても保有資産には限りがあるため、結局一時的な効果でしかない点も抑えておく必要があります。
以上のように、「投資内容」「投資判断の背景」「投資の支出と収入のバランス」を見ることで、企業の投資活動が適切に判断できるようになるでしょう。