総資産回転率とは
企業の資産が売上の獲得にどのくらい有効に活用されたかを示す指標に、総資産回転率があります。企業の決算書の一つであるバランスシートは、資産の合計金額が載っています。この総資産が全て売り上げに貢献したと仮定し、売上高が総資産の「何倍あるか(=回転率)」を計算したものが総資産回転率です。
バランスシートの左側である「総資産」は、右側の負債と資本を合わせた金額である「総資本」に一致します。総資本とは、企業が調達した資金です。そのため、総資産回転率を計算することは、「調達した資金がどのくらい有効に売り上げに貢献しているか」を測る指標でもあります。
総資産回転率の計算式は以下の通りです。
総資産回転率=売上高÷総資産
回転率は高ければ高いほどよいため、「分母の売上高を高める」もしくは「総資産額を下げる」ことによって回転率は高くなります。
例えば、「あそこは回転率が高い」と言われるラーメン屋さんなどの飲食店があります。ここでいう回転率について、お客さんを「売上」、カウンター10席を「資産」としたお店の例を考えてみます。
10人のお客さんが来た日の回転率は「10人÷10席=1倍」です。一方、100人のお客さんが来た日の回転率は「100人÷10=10倍」となります。限られた席(資産)でより多くのお客さん(売上)を獲得できる方が、回転率が高くなります。
総資産回転率を高めるには
総資産額を下げれば回転率は高まりますが、回転率を高めるために単に総資産額を下げればよいというわけではありません。
企業の資産の中には、企業活動にほとんど使用されていない遊休資産がある場合があります。これは、例えば、「買ってはみたものの何年も着ておらず、おそらくこれからも着る予定のない洋服」がクローゼットの中にあるような状況です。
これらの資産を処分することによって、総資産額を下げ、総資産回転率を高めることができます。
決算短信を入手して計算をしてみる
総資産回転率を計算するための情報を簡単に見つける一つの方法は、決算短信をみることです。決算短信とは、上場している企業が作成するもので、企業の業績や財務状況を数十ページでまとめたものです。
特に1ページ目の表紙には、企業の全体像をざっくり把握できる重要な数値が載っています。そのため、まずは1ページ目を読むと財務的な観点から企業の全体像を把握することができるようになっています。ここに、総資産回転率を計算する上で必要な「売上高」と「総資産」の額も掲載されています。
数値の意味と活用方法
さて、ご自身の企業や気になる企業の決算短信を入手し、総資産回転率を計算した後は、その数値を「企業の過去の数値」「競合他社の数値」「業界平均」などと比較します。
総資産回転率に限らず、あらゆる数値は比較して初めて意味を持ちます。比較によってその数値の持つ意味が変わってくるため、「何と比較をするのか」はとても重要になります。
「製造業」「卸売業」「小売業」における業界平均については、経済産業省から公表されている「企業活動基本調査確報」を確認するとよいでしょう。
バランスシート上の資産とバランスシートに載っていない資産がある
総資産回転率とは、あくまでバランスシート上の資産がどのくらい売上に貢献しているかを財務的な観点から表しているものであるという点に注意が必要です。
一方、企業はバランスシート上の資産以外にも重要な資産を持っています。例えば、金額では換算することが困難な「人財の価値」「ビジネスモデル」「戦略」「ブランド」といった資産です。これらは、会計上バランスシートには表示されません。
バランスシート上に現れない資産は、企業の売上に貢献する源泉でもあると言えます。そのため、「資産の活用が売上にどのような影響を及ぼしているか」については、総資産回転率と合わせて総合的に評価することが大切です。